「高倉健の図書係」 谷 充代
高倉健は読書家であったという本書の本筋は、多くの高倉健ファンには心地よい言説で
あると思う。「寡黙でストイック」という人と「読書家」とは、そもそも親和性が強い。逆に
言うと「寡黙でストイック」な方が、「本を全然読まない」ということだとなんだか困ってしまう
のではないだろうか。これはとりもなおさず、「読書」というもの自体が「寡黙でストイック」
という記号を強く帯びているからだと僕は個人的に納得している。
本書で高倉健が愛読したという数々の本は、しかし、案外と「気さく」な本が多い。それは僕には
好ましかった。これが「高倉健が中国や日本の古典等を愛読していた」という話だったとしたら、
やや天邪鬼な僕としては眉に唾をつけて本書を読んだと思う。但し本書で紹介されるのは
池波正太郎であるとか白洲正子の著作であり、ある意味でリアリティがあると僕は感じた。
高倉健の本名は小田剛一である。小田剛一という方が「高倉健」を演じてきたことは邦画の
歴史の金字塔の一つだ。常時「寡黙でストイック」というイメージを保持しなくてはならない
小田剛一のプレッシャーは大変なものだったろう。そんなプレッシャーの中で、気さくな本を
読んでいたと描き出す本書は、ある意味では素直な一冊と言える。著者と小田剛一との間にも
色々と華やかなこともあったのではないかと想像するのも僕の勝手ではあるが、そういう
読み方はとりあえずお蔵入りとすべきか。
