映画 「狂った一頁」 衣笠貞之助
上野の文化会館で「狂った一頁」を鑑賞した。1926年に衣笠貞之助監督が川端康成の原作を
得て制作した日本初のアヴァンギャルドサイレント映画である。今回は平野真由という現代の
音楽家が無声映画に音と音楽をつけるという趣旨で上映された。
映画について。実験映画であるだけに制約が無い。衣笠は自由に映像を操っている。1926年
当時の公開は専門家等からは高い評価を得たものの興行的には失敗したという。興行的な
失敗は当然と言える。どう観ていても感情移入出来る映画ではない。作者は精神病院という
舞台で、好き勝手に映像をいじくっているだけの作品だからだ。筋も何もあったものではない。
但し、その「実験精神」は瞠目に値すると思う。小林秀雄に言い方を真似ると「絶後と言いたい」
ということなのだと思う。本作が邦画の歴史の中で飛びぬけて孤高の存在なのだと思う。衣笠
にはもう一本「十字路」という前衛作品があると聞く。僕は未だ観ていないが、今回の鑑賞を
踏まえて近いうちに観ようと思ったところだ。
音楽はどうか。今回の上映を観ていてサイレント映画における「音」と「音楽」の存在感の
強さには感銘を受けた。セリフが無い映画を観ていると、通常の映画以上に音に注意が
高まる。その状況の中で、平野が選んだ「音」と「音楽」の強さが心地よかった。サイレント映画
を自由に音で飾るという例はフリッツラングの「メトロポリス」にクイーンズの音楽を合わせた
1980年代の「メトロポリス」の上映も思い出したところだ。
ということで楽しい鑑賞だった。