「世界の本当の仕組み」 バーツラフ・シュミル
新聞の書評を読んで本書を手に取る機会を得た。感想は二点である。
一点目。
本書はやや冗長で繰り返しが多く、つまり話が長すぎるきらいがある。本書の内容自体は興味深いだけに、
ある意味勿体ない。表やグラフをもっと多用すれば、より簡潔に整理できると強く思った。
二点目。
一方で「本書の内容」である。僕には著者が開陳する各種の数字がどこまで正しいのかを
確認するすべがない。従い、とりあえず著者の説明がそれなりに正しいという前提で本書を
読み進めるしかなかった。
著者は現在の気候変動への各国、各社、各人の対応の無力をこれでもかという筆致で描き
だしている。その著者の説明にはかなりの説得力があると個人的には感じた。著者は
はっきりとは言っていないものの、詰まるところ「人の数が多すぎる」という点に最後は集約される
ということかと思う。
なぜ著者がそれをはっきりと言わないのか。そこにはある種のタブーがあるということなの
だろうか。「人が多すぎる」という課題への対応としては「楢山節考」であるとか、映画「ソイレント
グリーン」というようなフィクションが既に提出されている訳だが、それらはデストピアという
描かれ方しかされていないと僕は思う。本書の底に流れている一種のニヒリズムも、そんな
ある種の絶望から来ていると思った次第だ。
先の米国の大統領選挙において「DIG BABY DIG」を主張した方が勝利を収めた。言うまでも
なく、気候変動対応への逆行した主張である。本書が行きつく先は案外と、かような主張
への賛同になるのかもしれないという事が最後の読後感であった。