「挑発する少女小説」 斎藤美奈子
会社時代の同僚だった畏友の紹介で本書を読んだ。60歳強の男性である畏友が本書を
手に取った事自体が既に十分不思議であると思って読み始めたが、あっという間に読んで
しまった。
著者の斎藤によると本書で取り上げられている9つの少女小説は大半の男性は殆ど読んだ事
が無いらしい。その点僕は3作を実際に読み、映画やTVで観た更なる3作、合計6作に触れた
経験が有ったので本書を読み易かったという幸運に恵まれた。これはそういう機会を与えてくれた
自分の母親に感謝すべきだと、今にして思った次第だ。残念ながら9年前に亡くなった母親に
感謝の言葉を伝えられないのだが。
著者の斎藤の分析は快刀乱麻と言ってよい。当時はただ楽しく読んだり鑑賞していた
作品の裏にじわりと潜んでいた物を目の前に突き付けられて、時として寒気を感じた次第だ。
9つの作品(そういえばサリンジャーの代表作も「ナインストーリーズ」だが、これは数の偶然
の遊びなのだろう)の一つ一つに、「その時代の背景」なり「ジェンダー観」なり「教育観」なり、
つまりは当時の人間観が詰まっていることがよく分かった。また、それを読むことで発刊当時
の読者に刷り込まれていくものがあったであろうという斎藤の指摘は実に新しかった。
「新しい」と僕が今言ったのは、50年前にそれらに触れていた自分にとって、いまかような
指摘を受けた点が僕にとって「新しい」からである。
畏友がどうして本書を手に取ったのかは別途確認しなくてはならないが、本書を紹介
してくれたことには大変感謝している。