「アロハで猟師、はじめました」 近藤康太朗
日経の書評で本書を知った。猟師関係の本は以前からいくつか読んできている。「ぼくは
猟師になった」を書いた千松の幾つかの著作や、鷹匠の本等だ。なぜ僕がかような本に興味
を持つのかは自分でもまだよくわからない。
著者はメディアの記者である。メディアの記者が本書の中で猟に憑りつかれていく
様が描かれている。但し、著者は趣味として猟を始めたわけではない。あくまで仕事の為
に猟を始めたと断言している。著者の仕事とは勿論文筆業だ。柔らかい言い方をすると
「言葉を紡ぐ生業」ということだ。
著者はあくまで「書くため」に猟をやっている。始めた際の動機や狙いは本書でははっきりと
提出されていないと僕は読んだ。ある意味では読者の目を引こうというような打算的な動機が
あったのかもしれない。但し、当初の動機等はどうでも良い。本書は著者が猟を通じて時代と
人間を見つめる眼差しを磨いていく歴史を描いた自分史である。そう整理すると本書の
読み方にもコクが出てくる。
著者は本書においては基本的にはアジテーターという立ち位置なのだと思う。著者が
本書で展開する国家論、新自由主義への批判、ジェンダー論は、著者自身の意見だ。
それが正しいのかどうかは読んでいる僕には判断できない。
但し「著者が自身の猟を通じて自分の言葉を獲得し、それを主張に繋げている」という点は
ひしひしと感じるものがあった。その迫力がアジテートになっている。読んでいて快い興奮も
覚えた。時に読者を爆笑させる文章は「言葉を紡ぐ」ことを長年やってきた著者の余技かも
しれない。「笑いの中に真実がある」と喝破した昔の政治家もいたことを思いだした。
大変楽しい読書となった。本年で僕にとって一番面白い一冊だったかもしれない。そういえば
今日は12月30日。今日明日で、もっと面白い本に出合えるだろうか