読書「日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実」 吉田裕
週末のバンコクで読了した。
本書では第二次大戦の日本軍兵士のおかれた状況を具体的な例を挙げて分析
している。その具体とは「歯科医療状況」「軍靴の品質」「武器の性能」「兵士達の
体格の推移」「メンタル面の状況」等であり、非常に身近な素材で出来ている。
いわば、「ロジスティック」であり、その「ロジスティック」が与えた影響という
話だ。
本書を読んでいると、当時の軍部が精神主義に走らざるを得なかったという
心証を強く持った。従来は「精神主義が前提として存在し、その結果として貧しい装備
で闘うことになった」という理解だったが、実は「貧しい装備しか可能ではなかった
ので、精神主義に行かざるを得なかった」ということが実態ではなかったのかという
ことである。
それでは、かような話は現代には無いと言えるのだろうか。それを考えるという
ことが、第二次大戦を2020年の今日に本書を読むということなのだと思う。
ロジスティックを精神主義でカバーするという心性は、現在の僕らにも残っている
のではないか。それを簡単に否定することは案外難しい気がしてならない。
それは精神主義が包含しているある種の甘美さにも由る気がしている。例えばTVを
見ていても、精神主義が勝利するようなドキュメンタリーやドラマはいくらでも
見かけるからだ。僕らは醜悪なものを否定することはやれるとしても、甘美なもの
に耽溺しないということは案外難しいのではないか。
ということで色々と考えさせられた。本書が昨年良く読まれたことも頷ける
ものがある。かような本が読まれるということ自体は非常に良いことだとも
思った次第だ。