映画 「白夜」  ヴィスコンティ | くにたち蟄居日記

映画 「白夜」  ヴィスコンティ

久しぶりにヴィスコンティの映画を鑑賞した。

 

 ヒロインは天真爛漫かつ清純な「悪女」である。遠く別離している「彼」を毎晩橋のたもとで

待つ一方、自身の「悲劇」を主人公に滔々と語り、主人公を惑わしていく。

 

「惑わす」というよりは「たぶらかす」という日本語の方が僕にとっては正確と言える。そんな

彼女にたぶらかされた主人公は、実に間が抜けているとしか言いようが無い。

 

勿論、主人公の中に「純愛」というような言葉を見つけることも可能かもしれない。それを

見つけながら本作を鑑賞する方が、幸せな映画体験かもしれない。但し、そんな舞台の裏で

ヴィスコンティが舌を出しているような気がしてならない。本作は徹底的な喜劇なのだ。

 

 ヴィスコンティは本作をチネチッタ撮影所で全てセット撮影したという。セット撮影であった

ことで架空の港町の「はりぼて」性を上手に表現出来ている。美しい降雪の場面もあったが、

例えば橋の下に主人公を誘う娼婦であるとか、その橋の下に住んでいる浮浪者たちの

姿などから醸し出される異様な雰囲気が「はりぼて」の裏にびっしりと付着している。舞台劇と

映画との間に本作は位置しているように思えてくる。そして、それがこの喜劇の異様さを

高めている。

 

 本作を観ていてディケンズのクリスマスキャロルを思い出した。冬の3日間の夜を舞台と

したという設定が似ている。加えて主人公が、ある種の地獄巡りをしている点も似ている

のではないか。美しい雪の中、天真爛漫かつ清純な「悪女」にたぶらかされるという話は

どうみても「地獄巡り」としか僕には思えなかった。ヴィスコンティが、こんな映画を

撮っていたということは大いに勉強になった。