「HARUKI MURAKAMIを読んでいるときに我々が読んでいる者たち」 | くにたち蟄居日記

「HARUKI MURAKAMIを読んでいるときに我々が読んでいる者たち」

イメージ 1

 村上春樹の翻訳本の話である。翻訳といっても、村上が訳した本の話ではなく、村上
作品がどのように外国で翻訳され、広まっていったのかというある種のビジネス書と
言える。実に面白かった。

 村上作品は日本では「ノルウェイの森」以降は非常に有名となってしまい、所謂
「販売戦略」というものがどのくらい必要なのか分からない。但し、外国では
全く別の話である。特に初期の関係者の努力というものがどの程度だったのかは
想像すらしたことはなかった。本書を読んで、村上が外国でデビューするに際して
いかに多くの人が関与し、協力したのかが初めて分かったところだ。かつ、その
関与・協力はあくまでビジネスであるという点が、「村上春樹を巡る冒険」
として楽しい面が多々ある。

 本書を読むと、翻訳とは日本語を英語に直すだけではないことが明快に語られる。
英語圏の読者が背負っているであろう「歴史」と「背景」を踏まえて、村上作品に
大胆に切り込んでいく外国のスタッフの気合は大したものである。「第二の著者」とすら
言えるであろう翻訳者と編集者の知識と知恵が、初めて村上作品を英語圏の読者に
提供しうるものにしていく姿は感動的ですらある。その場面においては村上自身も
既に「協議意見者」程度でしかないと言える。翻訳というもののある種の本質が
垣間見えた思いがした。

 村上という日本人の作家の作品が世界である程度読まれているという事実は
日本人の一員として僕も嬉しく思う。その「世界である程度読まれている」までに
かような努力が必要だったということも嬉しく読んだところだ。今後更に
村上以外の作家も是非海外に行ってほしいものだという点が読後の感想に
なった。本書の著者が未だ三十歳台という事実にも驚いた。