「雪男は向こうからやって来た 」 | くにたち蟄居日記

「雪男は向こうからやって来た 」

「極夜行」で著者を知り、2冊目として本作を読んだ。実に面白かった。

著者が何に惹かれているのかを考えることが本書を読むということである。

著者自身も言っている通り、著者は雪男そのものに惹かれて雪男探索隊に入ったわけでも
ないし、本書を書いたのではないと読む方が僕にはしっくりきた。

勿論探索行が失敗に終わってから一人で山に残り雪男を探したという著者は雪男自体にも
興味は強いことは間違いない。但し、より著者が惹かれたのは雪男自体ではなく「雪男に
取り憑かれてしまった一連の人達」である。色々な方々がなぜ雪男というものに強く惹かれ、
人生そのものが変わってしまったのか。それが本書を書いた著者のモチベーションであったに
違いない。

雪男に取り憑かれてしまう人々は、かような志向と性向を持った方である。本書の題名は「雪男は
向こうからやって来た」であるわけだが、まさに雪男にやって来られてしまった人達の悲劇と喜劇が本書で
展開される筋である。本書は短篇集とも言えるが、それはかような人達の一つ一つの物語を編み上げた
タペストリーにも似た本の作りになっているからだ。

では著者のところには雪男は来たのか。色々な見方があると思うが著者自身は雪男は
自身には来なかったと考えていると僕は断定したい。勿論来かかったことは確かだろうが、
著者は本書を書くことで雪男を相対化し、相対化したことで、雪男に取り憑かれなかった
のではないだろうか。

それにしても面白い著者を発見したと思っているところだ。もっと角幡という方の本を読むことにした。