「731  石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く」 青木富貴子 | くにたち蟄居日記

「731  石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く」 青木富貴子

本屋で平積みになっているのを見つけて衝動買いし、衝動読みした。731部隊の
本を読むのは10年以上ぶりだろうか。

 本書は「石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く」という副題が付いている。本書で著者が
暴こうとしたものは何かを考えることが本書を読むという作業になる。

 本書を手に取る人の多くが知りたいと思う「闇」とは731部隊が実際に何をしていた
のかという事だろう。本書は、残念ながら、731部隊が何をしたのかを「闇」として
追及しているのではない。著者が考えている「闇」とは、731部隊という「史実」を
巡る様々な人間達を指している。その「人間達」の筆頭は731部隊を統率した石井四郎
であろうが、それ以上の巨大な「闇」と言えるのは米国であり、旧ソ連である。米国と
旧ソ連の前では、石井四郎は最早小心翼々とした一市民に過ぎない。冷戦勃発を背景
とした米国と旧ソ連の対立が細菌戦という一つの戦争の手段を争って手に入れよう
としている姿が本書であり、とりわけ、戦後の日本をリードした米国の動きが本書
の白眉と言える。

 本書で描かれる米国とは大義も正義もなく、ただ利己的に細菌戦に使える石井を独占
しようというエゴイストである。これはある意味驚くには当たらないだろう。国家
というものは基本的にはエゴイストであることは自明であろうし、米国もそれの
一例に過ぎない。但し、僕らは、ともすると、国家がエゴイストであることを忘れて
しまう場面がある。終戦後のGHQを迎えた日本人のかなりが、それを忘れていた場面
はなかっただろうか。それに対する冷や水が本書ともいえるのだ。

 731部隊の実態が今後どこまで分かってくるのか。当時の関係者も殆どが鬼籍に
入った状況で今後の究明が期待できるとは思えない。但し、731部隊への対応という
点は今なお僕らとして勉強出来るし、将来への応用も効くだろう。それが本書を
読むということかと僕は判断した