「香薬師像の右手」  | くにたち蟄居日記

「香薬師像の右手」 

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香薬師という仏像は中学時代に和辻哲郎の「古寺巡礼」を読んで以来、発見を待っている仏像
である。

 僕は深大寺の釈迦如来を観て以来、白鳳仏の大ファンになった。好きな仏像としては、法隆寺にある
夢違観音、橘夫人念持仏、元山田寺仏頭等がある。香薬師は、写真でしか見た事がないが、見る限りは
中々素晴らしい仏像だ。誰がどのような動機で盗んだのかは知らない。但し、金銭目当てというよりは、
香薬師に惚れぬいた方が盗人となったのではないか。そんなことも不図思ってしまうような愛らしさ
である。

 その香薬師を探し、右手を見つけ出したという話が本書の筋である。

 本書を読む限り、右手の経緯は、やや不透明である。特に、持ち主である新薬師寺が佐佐木茂索という方に
右手を渡したという背景が理解しがたい。切り出されたものとはいえ、国宝の一部を寺が個人に渡すという
ことがそもそもあるのだろうか。なんとなく、生臭い匂いも感じてしまうのは僕だけだろうかと思ってしまう。
骨董というものに付き物のある種の闇がそこにあったような気がしてならない。

 また本書を読んで気になるのは、後半部分で著者の配偶者の方にまつわる、ある種のオカルト性である。
前半部分では論理的な話の運びであっただけに、後半部分がいびつに感じられる。本書はある意味謎解きの
要素も多分に含んでいるだけに、肝心の部分で宙吊りにされた思いがした。

 等と、やや難点を書いたものの、香薬師発見に向けての朗報であることも確かだ。中学以来40年間
待ってきた僕として、残された時間はそんなにあるわけではないが、是非期待したい。