柔らかな犀の角 山崎努 | くにたち蟄居日記

柔らかな犀の角 山崎努

  山崎努の書評である。読まないわけにはいかない。

  俳優が本を読むということを考えたことがあまり無かったので、本書で見せる山崎の博覧ぶりに唸ってしまった。
  まず 読む本のジャンルの広さというものがある。山崎の読書は、やや乱読といっても良いかもしれないが、それは俳優として演じる役の種類の多さに重ねると当然であると言える。本を読むということは、他者の考えたことや他者の過ごしてきた時間を追体験することに他ならない。仕事上、多くの他者を演じることを強いられる俳優にとっては、そもそも不可欠な作業と言えるのではないかと考えると、腑に落ちた。

  一方、本書で見せる山崎の文章のうまさはまた別の才能である。本書を読む限り、山崎は俳優としての表現力だけではなく、文章家としての表現力にも無類さがあることがわかる。
山崎の筆は自由闊達だ。肩肘張らず、思うがままをスラスラと書いている。読んでいて心地良い。隣で山崎が語りかけてくれているようにも思える。
この文章力が俳優という仕事から来ているのか。これに関しては僕に現段階での答えはない。但し、直感として、俳優という表現家のなせる一つの技だと思う。余技というレベルを超えている山崎の語り部としての一面と言えるのではないか。

大変勉強になった。続編を期待したい。