「村上春樹は、むずかしい」  | くにたち蟄居日記

「村上春樹は、むずかしい」 

 僕は1984年頃の大学生の頃に村上を読み始めた。従い、コアなファンだと自分では思っている。本書も
その流れで読んだ。非常に読み応えがあった。感想は三点である。

 一点目。著者が村上の初期の短編を読みこんでいる点が興味深かった。村上は短編をある種の実験として書いていることが多いと思っている。短編をまず書き上げ、その後それを膨らませて長編を書くことがある。「ノルウェイの森」や、「ねじまき鳥」等がその好例である。但し、著者の分析は更に詳細にわたっている。「中国行きのスロウボート」を丹念に読みこむことで見えているものが多く、かつ、深い。本書を読んでいて、なるほどと膝を叩く場面がしばしば有った。

 二点目。村上の著作を時代別に骨太に分類している点に納得性があった。その時々の時代を村上がどう
踏まえて本を書いてきたのかが非常に綺麗に整理されている。ある意味「綺麗すぎる」感もある。村上が
本書を読んで納得するかどうかは分からない。但し、少なくとも、ある種の真実性を感じさせるものは
ある。

 三点目。同時代の作家を、読んでいくことは楽しい。作家が作風を変えていく一方、読者である僕自身も変わっていくからだ。本は読み手によって自由に解釈される権利がある。読み手の僕自身の変化を村上という同時代の
作家の著作から読み取るという作業も可能だ。例えば「風の歌を聴け」も20歳代と50歳代の僕では
まるで読み方が変わっている。それを僕自身の成長と言えるとしたら、それが読書の醍醐味である。