「けもの道の歩き方」  千松信也 | くにたち蟄居日記

「けもの道の歩き方」  千松信也


 著者の前作が面白かったので本書を見つけると直ぐに購入した。

 前作の際には著者の「遊び心」を強く感じ、それをレビューにも書いた。著者もまだ若く、
狩猟を「遊ぶ」気持ちが溢れている一冊であったことを覚えている。

 前作はその後文庫化され、多くの方が読んだ様子だ。では今回も同様の内容なのだろうか。
結論的に言うと、かなり違った一冊となっている。内容の違いから著者の成熟が見えてくる。
その後も狩猟を続ける中で家族も成し、子供に自然の見方を教える著者の背中は、7年前の
遊び好きの若者のそれとはかなり違ってきている。

 一番の変化は、猟師というものへの著者の見方なのだと思う。本作を読むと、著者は
猟師というものを、大きな自然のサイクルの中にきちんと入れこんでいることが分かる。
猟を行うという「人為」も、一歩引いて眺めていると「自然の営みの一つ」であることを
著者は繰り返し語っている。例えば205頁にて著者は以下を言う。

 「僕が狩猟を続ける理由はいろいろあるが、そのうちの一つに自然界の生態系の中に
 入っていきたい、野生動物の仲間に交ぜてもらいたいという気持ちがある」

 ここで著者は猟師という存在も、自然界の一部の「自然な存在」として捉えている。この
ような人間を相対視する見方は、森の中で動物として歩いてきた猟師の経験から産まれて
きている。それを僕はある種の成熟と感じた。

 著者は安っぽい自然保護に対して警鐘を鳴らしている。自然を知らない人が無責任に
「自然を守れ」という事に強く反発している。それはとりもなおさず、「本当の自然とは
何か」を突き詰める機会があった著者ならではの意見だ。僕自身は基本的には都市部に
住み、「無責任な」立場にある。であるがゆえに、本書は実に面白い。自分を相対化
することが出来るからである。