「ライヤーズ ポーカー」 マイケル・ルイス | くにたち蟄居日記

「ライヤーズ ポーカー」 マイケル・ルイス

イメージ 1
 
 「マネーボール」で著者を知ったことで本書を読んだ。

 僕は金融業の経験が無いので、本書に登場する諸々の金融商品には疎い。従い、理解のレベルは
低い。但し、それでも十分楽しく読めた。

 本書で描き出されるものは何か。第一義的にはマネーゲームの中で貪欲を追及した金融業の姿
である。自身の利潤を唯一絶対の指標とする姿にはある種の清々しさすら感じる。勿論登場する
人物はほぼ全員が「清々しい」とは言い難い人たちだ。僕が「清々しさ」を感じたとしたら
それは「唯一絶対の指標」を持つことに起因しているはずだ。

 僕らは「分かりやすさ」を貴ぶ傾向がある。Simple is the bestという言葉は仕事のみならず
色々な場面で使っている。本書の登場人物も利潤、つまりお金を追及することだけを
目的とする点で非常に分かりやすい。実にSimpleと言って良い。但し、その「分かりやすさ」が
何を引き起こしたのかも歴史が語ることである。本書に登場する「分かりやすい」人たちは、
その「分かりやすさ」の為に「清々しい」面はあるが、やっていることは「清々しい」とは
言えない。

 そう考えると「分かりやすさ」というものの邪悪な面が見えてくる。僕らは「分かりやすい」
ものに、時として弱い。その「分かりやすさ」ゆえに思考停止してしまいがちだ。これも
僕らの歴史が語っていることの一つである。
 
 著者は、本書を読む限り、金融業から脱出したようだ。その理由がどの辺にあったのかは
分からない。但し、その結果として著者は「分かりやすい」ものから少し身を引けたのでは
ないかと僕は想像している。その結果が本書であり、「マネーボール」であったとしたら
僕らは得難い著者を金融業から救い出したとも言えよう。