「ぼくはお金を使わずに生きることにした」  | くにたち蟄居日記

「ぼくはお金を使わずに生きることにした」 

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 2012年1月に購入していた。2年半を経て漸く読む機会を得た。

 著者は一年間をお金無しで暮らすという実験を行う。言うまでもないが、著者を支えた
多くの人や環境はお金がある環境にある。従い、厳密に言うと著者は非貨幣経済で一年を
生き抜いたというわけではない。但し、著者の狙いは非貨幣経済を探求するというものでは
無かったはずだ。むしろ、貨幣経済の中で、著者なりに「正しい」生活を送る方法を
徹底的に考えたかったということではないか。

 現時点での地球という小さな星で暮らすに際して、貨幣抜きを想定することは非常に
難しい。我々は日頃あまり語っていないが、貨幣は人間が発明した色々なものの中でも、
もっとも「優れている」ものだと僕は思う。

 僕は「優れている」と言った。但し、「優れているもの」にも、必ず毒もある。著者は
その貨幣の毒に敏感になるために、一年間の実験に踏み切ったのだと思う。毒を理解し、
解毒剤を探すことこそが、著者の狙いだったのではないか。

 では、著者は成功したのか。

 それに対する有効な答えはとりあえず本書では見当たらない気はする。「無償の助け合い」とでも
いうべきものは萌芽として見えるものの、それは著者一人が貨幣に頼らないで生活をする程度
のものだ。従い、本当の解毒剤かどうかは僕にはなんとも言えない。但し、著者が起こした問題提起
は大変興味深いものがあった。

 食事の場面が楽しい。やはり、「食べる」ということは実に大切なものであるなと思ったのが最後の
読後感であった。