「ラブレター」 岩井俊二
名高い本作を漸く鑑賞する機会を得た。
本作のテーマは題名通りラブレターである。「一番初めに書かれたラブレターが時を経て一番最後に漸く届いた」という物語が本作の筋であると僕は理解した。
本作の主人公は既に亡くなっている。ではヒロインは誰なのか。博子と樹と二人の女性ともにヒロインにも見える。但し、博子の役割を見ていると本当のヒロインは樹である。
実際、樹は博子と知り合わない限りは、中学時代の主人公(男性の樹)を思いだすことは無かったはずだ。博子からの手紙に返事を書くことで、ヒロインは過去を辿りはじめる。辿っていくうちにヒロインは過去に一つ一つの小さなエピソードを思いだしていく。それらのエピソードに込められた意味を辿っていくうちに、ヒロインは困惑していく。
一つ一つのエピソードが意味していたものは明確だ。明確であるはずなのにヒロインはそれを理解しない。いや理解しようとしていないようにも見える。
そんなヒロインを最後に「謎めいた過去」から解放させたのが、冒頭言った「一番初めに書かれたラブレター」である。遅配されたラブレターが一つの絵であったことは印象的である。なぜなら、それまで映画でやりとりされていたのは全て文字であったからだ。
ヒロインは「一番初めに書かれたラブレター」の内容を博子に告げないことに決めたところで本作は終わる。博子から始まったロマンスを最終的に受け止めたのはヒロインだからであろう。博子は吹っ切れたように見える一方、ヒロインはこれからどう生きていくのだろうか。そんな余韻が楽しい。
雪の場面が美しい。冒頭の神戸が雪景色で始まったことに軽く驚いたが、全編を雪が覆っている。岩井という監督は桜を美しく撮る監督だと思っていたが、雪も美しい。雪と桜は似ているのかもしれない。そういえば桜に関する会話も本作には有った。