「ローマ亡きあとの地中海世界」 2 塩野七生 | くにたち蟄居日記

「ローマ亡きあとの地中海世界」 2 塩野七生

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塩野七生の地中海を巡るキリスト教とイスラム教のパワーゲームの第二巻である。

 本巻ではキリスト教側の騎士団が、北アフリカに出向いて、海賊に拉致されたキリスト教徒を
救出する場面が繰り返し書かれている。救出すること自体には違和感は無い。但し、救出の
具体的な方法がお金で買い戻すという「商行為」であった点にはいささか驚いた。

 僕の理解では商行為とは相手に対する信頼が不可欠というものだ。たとえ相手が悪人であって
も商売は出来るということは現在の世界でも同様である。悪人同志が、お互いに自分と相手の両方
を悪人だと理解した上で、信頼関係を結ぶことも可能である。これは「自分がこれを
やったら、相手はこれをやる」という理解の「共有」にほかならない。マフィア同志の連携や連合等も
その一つに違いない。

 そう考えると拉致された人を金で売買するという商行為も、キリスト教側とイスラム教側
の間にある種の信頼関係があることが前提であったはずだ。現に本書でも、お金が届くまでの間に
自らが人質となる騎士の方の姿も描かれている。

 ここまで読むと、今の日本も拉致問題を抱えていることを思いだすしかない。拉致問題が
純粋な人権問題だけでは解決されず、政治問題や経済問題に拡散していく様は、中世の地中海
と余り変わらないのかもしれない。