安曇野を訪れて その3

安曇野を自転車で一巡りしてから松本に行った。
かつて麹町に「三城」という蕎麦屋があった。平日の昼間しかやっていないという強気の店である。
会社の上司が蕎麦好きでたまにタクシーで出かけた。
メニューはない。まず、わさび漬けとキノコをつまみとして日本酒が出てくる。松本の岩波酒造というところ
が作っている日本酒だ。淡麗という言葉が似合う。勤務中の昼にお酒を飲むことが出来るのは上司が一緒
だからである。上司は日本酒が好きで、かならずお替わりを頼む。部下としての僕も従うしかない。
結構良い気持ちになってくると蕎麦が出てくる。黒っぽくて固くて、ごろごろした蕎麦だがしっかりした味を
している。同時にお漬物も出てくる。上司は、漬物で酒を飲むために更に日本酒のお替わりを頼む。部下
としての僕も従うしかない。
お蕎麦もお替わりする。さすがにお腹が膨れてくる。デザートとして花豆を煮たものが出てくる。甘味を
抑えた味で、更に日本酒にも合う。
会社に戻ると上司はしっかりと仕事をしている。部下の僕としても従うしかない。
三城が閉店したのは2006年のことだった。故郷の松本に移転するからという理由であった。上司は
大層惜しがっていたがしょうがない。
8年ぶりの三城は東京当時と全く同じであった。当時の女将さんもご健在である。挨拶すると僕のことを
覚えていてくれたことに驚いた。酒を飲みながら、もう引退している上司にメッセージを送った。すぐに
返事が来た。
無理を言って日本酒を分けて貰って帰京した。帰りの特急列車では良く眠れた。久々の一人旅は
そんな風にして終わった。まあ 人生自体が一人旅ではあるのだが。