「恐怖と欲望」  スタンリーキューブリック | くにたち蟄居日記

「恐怖と欲望」  スタンリーキューブリック

イメージ 1
 
 スタンリーキューブリック幻の処女作である。彼自身が封印したことで幻であったが最近発見されて
公開され、DVD化されたという。英語のウィキペディアを見ているとプエルトリコの図書館かフィルムセンター
で発見されたらしい。

 確かに後年のキューブリックの作品と比較しようは無い。但し、封印するほどの凡作ではない。その後の
キューブリックを知っている僕らとしては彼の「萌芽」を探すだけでも鑑賞する意義がある。

 この作品のテーマは戦場における狂気の有り様だろう。捕虜の娘を凌辱しようとして逃げられ、その娘を
闇雲に射殺してしまう兵士は完全に狂気に陥っている姿が描かれている。その兵士以外にも、例えば
敵の将軍を殺害することに異様に固執する兵士、その狙われている将軍等も軒並み狂気染みている。
 
 考えてみるとキューブリックは戦場を舞台とした作品は多い。本作に始まり、「突撃」「フルメタルジャケット」
などは完全に戦争映画であるし、「バリーリンドン」でも戦場シーンが印象的である。

 キューブリックが描く戦場は人間の狂気に満ちている場面が多いことも確かだ。少なくともいわゆる「戦争映画」のようなダイナミックな場面も無ければ、ヒーローも不在であり、センチメンタルな悲劇も無い。あるのは戦場という舞台で発揮される普通の人の「狂気」である。キューブリックは人間の狂気の有り様を描く為に戦場を選んでいるのかもしれない。他にも山の中のホテルであるとか、宇宙空間での孤独な狂気であるとか、ニューヨークの富豪連中の狂気であるとか、色々な舞台で人間の狂気を描いてきた彼だが、戦場が一番お気に入りだったのかもしれない。

 ということでキューブリックファンならやはり本作は観ておきたいと思う。またキューブリックを知らない方でも
充分興味深く鑑賞できるはずだ。