「世界と闘う「読書術」 思想を鍛える一〇〇〇冊

博覧強記の佐藤は相変わらずだが、佐高という方は「逆命利君」という著作だけを読んだだけであったので新鮮であった。
本書で一番はっとしたのは176頁にて紹介されているドイツ・イデオロギーに関する佐藤の見解である。佐藤によると同書に原本には2種類あるという。一つはマルクスが書いたオリジナルであり、もう一つは他人が切り貼りしてしまったものであるという。
本書で一番はっとしたのは176頁にて紹介されているドイツ・イデオロギーに関する佐藤の見解である。佐藤によると同書に原本には2種類あるという。一つはマルクスが書いたオリジナルであり、もう一つは他人が切り貼りしてしまったものであるという。
問題は、後者の方が圧倒的に流布されてしまったという経緯である。岩波書店は日本語訳書を以前は後者の翻訳であったがそれを前者に切り換えたという。その点を佐藤は「思想については流布したものを読まないとダメなんです」と主張している。
その主張に驚かされた。
本は出版された後は一人歩きすると言われる。著者が意図しない読まれ方をすることも多いはずだ。それを「誤読」というのかもしれないが、そもそも本は自由に読まれる権利を持っていると言っても良いと思う。
佐藤の指摘はその点にある。つまり「本が何を語っているか」ではなく「本がどのように読まれたのか」に軸を置くと、切り貼りされた方を重視することはある意味で自然なのだと思う。
お二人は縦横無尽に本を語っている。おそらくは、著者の意図とは違う読み方もしているだろう。その「読み方」
こそがその方の個性である。「本を読むことを語る本」というメタな本が出来たということは人類の大きな功績
ではないだろうか。