「東京家族」 山田洋次

出張の機内で鑑賞した。感想は以下二点だ。
一点目。「東京物語」との相似について。
小津映画が好きな人には楽しめる作品だ。「平山」「間宮紀子」というような名前から始まり、ローアングルや風景の切り取り方等正確に小津映画へのオマージュとなっている。かつ、パロディになり下がっていないのは、監督の山田が「東京物語」のテーマをきちんと現代に翻案しているからだ。
「東京物語」のテーマは「大家族制度の崩壊と核家族化への移行」という言い方も出来るし、「現代の姨捨山」という言い方も出来る。子供たちと久しぶりの面会を楽しみにしてきた老夫婦を子供たちが善意に溢れながらも、持て余してしまう話だ。小津が描いたテーマが今なお新鮮な映画の主題として活きている点が本作の大きな見所である。子供たちと両親の間にはなんら敵対関係はなく、周囲からはむしろ羨ましがられているわけだが、そこに吹いている隙間風というものもある。子供たちは自分の家庭を持ち、そちらに忙しい。従い老いた両親を面倒見きれない。現在でもありがちな話だ。それを60年前に描き出した小津映画の先見性もあろうし、それを更に21世紀を舞台に仕立てなおした山田の手腕というものもある。
二点目。「東京物語」との相違について。
「東京物語」と大きく違う点がある。「東京物語」は小津映画の通奏低音である「父と娘」であったのに対して本作は「母と息子」の話である点だ。
「東京物語」に見られる父と娘とは笠智衆と原節子である。義理の親子である点がひねりが効いているが、小津映画は「晩春」にしても「秋刀魚の味」にしても父と娘の話が多い。一方本作では 吉行演じる母と妻夫木演じる息子との話が大きなテーマである。
老夫婦の子供たちの中で妻夫木だけが未婚であり不安定な生活を送っている。そんな妻夫木の庇護者が母の吉行だ。父の橋爪の話でも、妻夫木は母親似とのことらしい。そんな妻夫木の庇護者が吉行の死によって吉行から蒼井優に移行することが本作の第二のテーマである。吉行の死は、彼女が妻夫木の家で蒼井と会って安心したからとも読めるかもしれない。そんな「庇護の移行」は吉行の腕時計によって象徴される。吉行の腕時計が蒼井に渡される場面が本作の白眉である。そんな「母と息子」の話は山田が現代の「東京物語」に持ち込んだものであり、小津と決定的に違う点だ。
脇の俳優も良い。西村雅彦、夏川結衣、小林稔侍等、実に上手い。また杉村春子を演じた中嶋朋子は実に杉村を演じている。そのあたりも楽しかった。
山田洋次という監督は「男はつらいよ」によってある意味封印されてきた監督であったと今思う。「男はつらいよ」からある意味で解放された後の山田の作品は実に面白い。僕自身は「男はつらいよ」の大ファンであるにしても、そう思っている。
一点目。「東京物語」との相似について。
小津映画が好きな人には楽しめる作品だ。「平山」「間宮紀子」というような名前から始まり、ローアングルや風景の切り取り方等正確に小津映画へのオマージュとなっている。かつ、パロディになり下がっていないのは、監督の山田が「東京物語」のテーマをきちんと現代に翻案しているからだ。
「東京物語」のテーマは「大家族制度の崩壊と核家族化への移行」という言い方も出来るし、「現代の姨捨山」という言い方も出来る。子供たちと久しぶりの面会を楽しみにしてきた老夫婦を子供たちが善意に溢れながらも、持て余してしまう話だ。小津が描いたテーマが今なお新鮮な映画の主題として活きている点が本作の大きな見所である。子供たちと両親の間にはなんら敵対関係はなく、周囲からはむしろ羨ましがられているわけだが、そこに吹いている隙間風というものもある。子供たちは自分の家庭を持ち、そちらに忙しい。従い老いた両親を面倒見きれない。現在でもありがちな話だ。それを60年前に描き出した小津映画の先見性もあろうし、それを更に21世紀を舞台に仕立てなおした山田の手腕というものもある。
二点目。「東京物語」との相違について。
「東京物語」と大きく違う点がある。「東京物語」は小津映画の通奏低音である「父と娘」であったのに対して本作は「母と息子」の話である点だ。
「東京物語」に見られる父と娘とは笠智衆と原節子である。義理の親子である点がひねりが効いているが、小津映画は「晩春」にしても「秋刀魚の味」にしても父と娘の話が多い。一方本作では 吉行演じる母と妻夫木演じる息子との話が大きなテーマである。
老夫婦の子供たちの中で妻夫木だけが未婚であり不安定な生活を送っている。そんな妻夫木の庇護者が母の吉行だ。父の橋爪の話でも、妻夫木は母親似とのことらしい。そんな妻夫木の庇護者が吉行の死によって吉行から蒼井優に移行することが本作の第二のテーマである。吉行の死は、彼女が妻夫木の家で蒼井と会って安心したからとも読めるかもしれない。そんな「庇護の移行」は吉行の腕時計によって象徴される。吉行の腕時計が蒼井に渡される場面が本作の白眉である。そんな「母と息子」の話は山田が現代の「東京物語」に持ち込んだものであり、小津と決定的に違う点だ。
脇の俳優も良い。西村雅彦、夏川結衣、小林稔侍等、実に上手い。また杉村春子を演じた中嶋朋子は実に杉村を演じている。そのあたりも楽しかった。
山田洋次という監督は「男はつらいよ」によってある意味封印されてきた監督であったと今思う。「男はつらいよ」からある意味で解放された後の山田の作品は実に面白い。僕自身は「男はつらいよ」の大ファンであるにしても、そう思っている。