「甲子園への遺言」 門田隆将 | くにたち蟄居日記

「甲子園への遺言」 門田隆将

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 うなりながら一気に読み切った。高畠という方をまったく知らなかっただけに大変新鮮に読めた。

 これは暴論かもしれないが、高畠という方は怪我でプロ野球の選手としての寿命が短かったことが本当に幸いだったのだろうと思った。勿論、ご本人にそんなことを言ったら激怒されたかもしれない。しかし、現役選手を断念するという巨大な挫折がこの方の、おそらくは、出発点になったのだと僕には思えて仕方がない。「挫折が出発点だった」という話はたまに聞くわけだが、実際にそれが出来る人は限られているだろう。余りにも多くの人にとって「挫折は挫折」でしかないからだ。

 但し、この方も名コーチで終わっていたとしたら、「名コーチ列伝」の一人で終わっていたと思う。やはり還暦を
前にして高校教師をめざし、実現した点が、ずば抜けてユニークだ。

 今年の正月のCMに父親が娘に「お父さんの夢は?」と聞かれて、一旦は一笑に付すが次第に考え込むというものがあった。僕も40歳代後半の中年であるが最近「将来なりたいもの」を再度考えるべきだと思っている。
 そういう中で、既にそれを実践された高畠という方の凄味が分かる。これは僕のように中年にならないと分からない凄味であることも確かだ。

 高校教師になって一年半で高畠は急逝した。60歳で亡くなったわけだが、まさに「青春真っ盛り」の中での「夭折」という印象を持たざるを得ない。60歳にして青春時代を取り戻せる能力は紛れもなく天才としか言いようがない。「人の死」を描いている本がかように爽やかであるのも、高畠という方の天才的な人生のおかげということ
だろう。