「そして誰もいなくなった」 ルネ・クレール監督 | くにたち蟄居日記

「そして誰もいなくなった」 ルネ・クレール監督

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 まだ十代初めの頃に新聞の広告で本作の公開を見た。今調べてみると1976年に岩波ホールで上映された際の広告だったようだ。その段階で原作を読んでいたので観たいと思っていたが、結局果たせなかった。鑑賞したのは2011年の今年である。三十五年ぶりに思いを達することが出来て感慨深い。


 DVDの解説にはクリスティー映画の最高傑作とある。僕が鑑賞したクリスティ映画は「ナイル殺人事件」、「オリエント急行殺人事件」、1974年に再度作られた「そして誰もいなくなった」と本作だが、その4つの中で考えるなら、確かに本作が一番良く出来ている。ナイルとオリエントは豪華な映画で僕も十分好きではあるが、いささかオールスター気味で緩い部分は否めない。その中で、本作の切れの良さは際立つ。


 結末については色々な論と意見がある点は原作の大ファンの僕にとっては良く分かる。クリスティ自身が本と戯曲で2通りの結末を用意していたという点は今回初めて知った。少なくとも戯曲の場合には、本作のような結末にせざるを得ない点は確かだろう。これはこれで悪くないということが観終わった後の感想だ。


 それにしても、時折思うのだが、古い映画には切れ味が良いものが多い。

 現代のCGやSFX等の技術的な面での進歩には感心する。一方、話が冗長であったり、無駄なエピソードが多かったりするものも多い。やはり、これは素直に脚本の差だ。現代の映画がどのくらい脚本に手間と金を掛けているのかに関しては知見が無いが、観ている限り、首を傾げることも多い。

 CGやSFXが無かった事で脚本を磨きに磨いたのが昔だったのかもしれない。勿論古い映画でも脚本が雑な作品も山ほどあったろう。そういう作品は長い年月できちんと淘汰されたはずだ。本作は1945年製作だが、六十六年経った現在にも生き残っているという事実は重い。