日本旅行記 登戸の鰻
西国立駅から南武線というのんびりした鉄道に乗って、登戸駅で降りた。登戸駅で降りたのは、乗り換える為だが、ここではその話は関係無い。
鰻の話である。
その鰻は登戸駅の駅ビルの魚屋のなかにあった水槽に居た。「多摩川の天然鰻です」と書かれた水槽に中に鎮座ましましているのである。50センチくらいはありそうで、細長い割には まるまる太っている感じもある。そうして、鰻の常だが、水槽の底にだらしなく寝転がっているだけだ。泳がない魚の代表選手の一人ではないか、鰻は。
多摩川の鰻か。いや、鰻の多摩川なのか。
多摩川が、今なお現役でバリバリやれている川であることをすっかり忘れていた。そうか、今でも鰻くらいは十分養えている、隆々たる大河であったわけだ。ふうむ、これは失礼した。
そういえば甲州街道だって、多摩川があったからこそ、出来た道筋なんだろうし、うっかり乗ってきた南武線なども多摩川沿いに走っているわけではないか。民を養ってきた母なる川、いや、河だったことをすっかり失念していた。
ということで、多摩川の鰻にお詫びに頭を下げた次第だ。水槽に頭を下げている中年男というのも不気味だが、そのくらいの敬意は払っても良いではないか。終の住処と考えている国立とて多摩川沿いなのだから。