草石のガチンコネット小説
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終わる世界 第22話

花火の後、人ごみにまぎれて帰るのが嫌だった僕は、
華ちゃんと話して終電ぎりぎりまで散歩をしていくことにした。
川原をずーっと歩いていると、
どんどん人が居なくなって、
川の流れる音が聞こえるようになってきた。
鈴虫がせわしく鳴いて、
夜空には満点の星がきらめいていた。
川原の横の道が険しくなったり、
歩道が出来ていたり、
随分歩いた。
気がついたら、知っている道に出てきて、
みどりやの看板が見えた時には二人で笑った。
いったいどれくらい話しただろう。
華ちゃんが昔、家族が仲良しだったときの
幸せな話や、高校であった面白い話、
友達の恋愛相談の話や、好きな食べ物の話。
正直、夢中になって話を聞いていた割には、
あまり、頭に入っていない。
ただ、夢中で話している顔や、繋いだ手の温もりは、
未だに残っているようだった。
家に帰ると、いつものアパートがあって、
二人で帰ってきて、
寝るときも手を繋いでいた。

朝目が覚めると、華ちゃんは居なくなっていた。
手紙だけ置いて居なくなっていた。
僕はそれを見つけて、気づいたら家の周りを
探してまわっていた。

「サカズキ君へ、
とても楽しかったです。
家のことを忘れることができる、という
大きな課題は楽々クリア出来てしまうし、
本当に、帰りたくない、というか、
一緒に居たい。という感情になってしまって、
正直自分で困惑しています。
こんなこと別れ際に言うことじゃ、ありませんよね。
とは言え、家だってそんなに遠いわけではないですし、
いつでもきっと会えると思います。
私はおうちが厳しいので、なかなか都合がつかないとは
思いますが、早いうちに必ず顔を出します。
そのときは、またどこかにお出かけしましょうね。

田中華子より。」

僕は、
彼女に、
一体、
何を、
してあげたのだろう。






その夜…

「ただいまぁー!!」
「あら華子。私たちが留守の間、大丈夫だった?」
「ぜーんぜん大丈夫だよぉー、もう高校生!
高校生は、お、と、な♪」
「はっはっはっ、そのうち華が男を連れてきたりするんじゃないかって
お父さんは心配だぞ!」
「だいじょーぶ!私はどこにもいかないよ!」
「お土産あるのよ、華子が好きなネンリンヤ。」
「やったぁー!おかあさんだぁーいすき!」
「寂しかったのか?華、随分はしゃいじゃって」
「ちょっといいことあったからね♪」

終わっていた、どうしようもなく、
世界は、
終わっていた。
君も、僕も。

未成年編 未完

終わる世界 第21話

すっかりあたりも暗くなってきて、
会場に着いたころには開始20分前になっていた。
優待席のあるテントに着いた。
茜さんの証明書を出せとか言われたらどうしよう、
なんて考えていたが、それは杞憂で、
難なく席に着くことが出来た。
若い子が非常に多く、かかっている音楽も
「真夏のオリオン」と、なんだか自分も高校生に
戻ったような感覚に陥った。
パイプ椅子に腰をかけると、
冷たいお茶が出された。
おお、なんか優待されている気分になってきた。
しかし、茜さんなんでこんなところに優待されてんのかな?
ちょっと気になった。
華ちゃんは
「まだですかねー…うー」
なんて言って興奮している。
それもそうだ、発射台から一番近くの風通しのいい
テントの下、若干僕だって興奮している。
そして、前座のマイクパフォーマンスによって
会場は大きく沸き始め、
会場全体でカウントダウンをしていった。
3…
2…
1…
ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅ
パンっ!!パラパラ…
大きな音をたててあがった花火は圧巻。
空がまるで昼間みたいにどんどん光を増していく。
花火はバラエティに富んでいて、
「きゃー、サカズキ君見てください!
ハートですよ!ハート!あ、あれはニコチャンマーク!」
まったく…かわいいなぁ…
「あれはケンチャンラーメン!きゃー!」
大喜びでよかった。
しかし、山木が言っていたことも、
理にかなっているんだよな。
しかし、こうなるとかえって言いにくいことではあるよな…
大人の責務…ね。
すると、田中さんは僕の耳元に顔を近づけて
こうささやいた。
「明日、私、家に帰りますね。
だから、今日一日だけ居させてください!
だから…だから、そんな顔をやめて。
いっぱい楽しみましょう!」
と、僕の手を握って、ニコリと笑った。
ニコリと笑った、ほほに涙が一筋こぼれた。
僕も手を握り返した。

終わる世界 第20話

花火大会の会場の駅に着いたころには4時をまわり、
じょじょに夕暮れに近づいてきているころだった。
駅から少し歩いた川原が会場だとチケットに地図が書いてあった。
駅前からすでに屋台がたくさん出ていて、
お祭りムードでごった返している。
川村さんが来たら2秒で失神してしまうような人ごみだ。
田中さんはきょろきょろしてニコニコしている。
向かいからくる田中さんと同い年くらいの女の子が
綿飴を食べているのを田中さんが凝視していたので、
近くの屋台で一つ買ってあげると、
「ありがと」
なんて言って少し恥ずかしそうにしていた。
少し歩くと、田中さんはそれを食べ終わって、
(どんな速度で食べていたんだ)
「会場に着く前にトイレに行っていい?」
なんて言って近くのコンビニに入っていった。
そのコンビニの前で待っていると、
ふいに声をかけられた。
「おー縁があるねー…」
ふっ、と振り返ると、
この前銭湯で出会ったおっさん、もとい、
おにいさんがいた。
相変わらずのひげ面で、
茶色いタンクトップにブルージーンズにサンダルという
なんというかこの人にぴったりな格好だった。
帽子はこの前のハンチングと微妙に色が違うだけだ。
「こんにちわ。」
そっけなく返すと、
「冷たいねー…冷たい女の子は好きなんだけどなー
冷たい男の子はもてないぜ。
ところですごい人ごみだねぇー
これから祭でもやるのかね?」
「花火大会ですよ…知らないんですか?」
「あーそーなんだ…なるほどねー」
なんのためにここにいるんだ?
この人は。
「あー、俺はねー、ちょっとした仕事でねー」
といって、ポケットティッシュを僕に手渡した。

SLOT MAGA

スロット屋?
すると、そのおにいさんはニイっと笑って、
「そ、俺の仕事。スロプロなんだ♪」

「今日は調子が悪いから引き上げ。
その帰り道によく見かける子がいるなと思って、
声をかけたのさ!」
「あの…スロプロは仕事ではないと思うんですが…」
「あ、そうなの?医者と一緒にダブルワーク気取りだったんだけどな」
さぞかしがっかりした素振りを見せるおにいさんだった。
「じゃ、そろそろいくわ。
パーマン パーマン パーマン とおくで よんでる 声がする きてよ パーマン ぼくのところへ きてよ♪ってな」
と歌いながら人ごみに消えていった。
そして後ろから
「お待たせ」
と、声が聞こえた。
田中さんが帰ってきた。
ああ、考えてみたら、あのおにいさんも
確か田中って言うんだよな。
ま、別にいいか…
「じゃ、行こうか」
そう言うと、田中さんは
「ちょっと待って」
と言って僕の浴衣のすそをぐっと掴んできた。
「あのー…ずっと言おうと思っていたんですけど、
私にとって、家族ってすごくマイナスなイメージで、
私にとって、家族ってコンプレックスなんですよね。
だから、出来たら苗字で呼ばないで、
下の名前で呼んでもらえるとうれしいんですけど…」
…?どうしたんだろう?急に。
「ん、なんだ、全然いいけど…
じゃあ、川村さんに習って華ちゃんって呼ぼうかな?」
「ありがとっ」
ニコリと微笑む田中さん…もとい華ちゃんだった
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