米国のラバーメイド社 をご存知でしょうか。
1920年にオハイオ州の片田舎に創業された、プラスチック用品メーカーです。
プラスチックのバケツやごみ箱などを作っている会社で、日本ではまったくなじみはないですが、米国ではラバーメイド社の商品がない家はないと言われ、ブランド認知率98%、市場シェア約60%という超優良会社でした。
米国経済紙フォーチュンが毎年会社役員や企業アナリストへのアンケートに基づいて発表する、「アメリカでもっとも賞賛されるべき会社」ランキングのトップ10の常連で、93年・94年はコカコーラやマイクロソフトを押しのけ、第一位を獲得。
なんと47年間連続増収、5年間で売上・利益を倍増させるという公約を果たし続け、株価は当然美しい右肩上がり。社員のリストラはしたことはなく、本社のあるウスターという人口二万人の田舎町にはラバーメイド社が資金負担をした立派な高校や図書館が随所にある、そんな「良きアメリカ」を代表するような会社でした。
ところが、そんな優良企業に転機が訪れました。
きっかけはプラスチック価格の高騰。
「ついにラバーメイド社の連続増収増益記録がストップ」といわれるのを恐れた経営陣は、そのコスト上昇を吸収すべく経費合理化プロジェクトを慌てて立ち上げ、外部からその道の「プロ」を招聘しました。
過去何十年も和気あいあいと楽しく元気に働いていた会社も、「プロ」から見れば絞れる贅肉部分がたくさんあります。当然の帰結として、「ラバーメイド社初のリストラ」が実施され、厳しいコスト管理環境下に置かれ、社内に窮屈感、閉塞感がたち始め、優秀な人材にヘッドハンターの誘いの声が山ほど殺到し、人材流出が始まりました。
結果、フォーチュン誌のランキングトップ10より姿を消し、会社の株価は急降下。
1999年、ついに競合他者からの吸収合併の申し出を受け、事実上会社売却することになってしまいました。
なぜこういうことになってしまったのか。
経営陣は株主に対する責務を果たす、つまり株価水準を保つために機関投資家やアナリストに指摘される課題に腰を据えて取り組まねばならない。のみならずQ毎の決算数字発表のためにその進捗を数字で示さねば信頼を失います。
経営陣の失敗を敢えてあげるとすれば、「そういった環境下において動揺しがちな従業員の気持ちをくみ取りながら施策を講じるというデリカシーに欠けた」ということなのかもしれません。
うまくいっている会社ほど、当然位置エネルギーも高くなっているわけで、落ちるときは本当に早い。
・何か大きな変化が起こる前に変化を予測し、先手を打って対策を講じること
・常に脇をしっかりしめて、ニュートラルに物事を考え、冷静に対策を講じること
・社員にロジックを突き付けることではなく社員の共感を得て、企業価値向上に邁進すること
が経営陣にとって本当に重要だと感じました。
これから日本の優良企業でも、世界的な金融環境悪化が多方面に与える余波によりこうした転機を迎える会社が数多く出てくると思いますが、こういった場面での優良企業の経営の舵取りにはしっかり注目して、現在及び将来の自分の糧にしていきたいと思います。