ガンジーが説いた「七つの社会的罪」
理念なき政治
労働なき富
良識なき快楽
人格なき知識
道徳なき商業
人間性なき科学
献身なき信仰
道徳なき商売
ガンジーが言う「七つの社会的罪」の中で私が一番大きくうなずいたのが「道徳なき商売」です。日本はドイツと並んで世界に冠たる物作り大国で、そこには日本独自の優れた技術と魂が込められていました。「made in Japan」は長く最高の信頼の証でした。同じように、ドイツも独自の技術と魂を込めて「made in Germany」製品を作って、世界を唸らせていました。しかし、今日では30年、40年前ほど「made in Japan」にかつてのような称賛の声は聞かなくなりましたね。ドイツでも信頼を大きく揺るがす事件が起きています。
なぜだと思いますか?
それは魂が抜かれてしまったからだと、私は思っています。
魂が抜かれた「made in Japan」製品は、単にコストパフォーマンスが良いだけの商品になりさがってしまいました。それがよければ売れるし、それが悪ければ売れない、陳腐な製品になり下がってしまったのだと思います。
例えば、私が25年ほど前に中学校に入学した娘に買い与えたCDプレーヤーは全く故障することなく14年ぐらい使えました。しかし、その後に買ったCDプレーヤーは3,4年で故障してしまいました。前者の設計思想には「少しでも長持ちするように」というメーカーの良心が色濃く反映されていました。そのメーカーの製品は壊れないで長持ちするという定評がありました。技術者は魂を込めて作っていました。しかし、後者は初めから、3,4年で壊れるように、部品一つ一つの寿命の設計からして短命なものに変えて作ってあります。すなわち、大量生産、大量消費の時代に変わっていたのです。「消費は美徳」が新しい常識になっていました。実はそこに密かに侵入していたのがマネー資本主義の思想、「マネー教」でした。
魂が抜かれた日本の家電製品の末路はみじめなものです。かつて世界に関たる日本の家電製品メーカーは今や中国や韓国にすっかりその地位を奪われて、各社の経営も青息吐息になってしまいました。
製造業に勤めている方であれば、これと同じような事例はたくさんご存じではないでしょうか?差し支えのない範囲でそういう事例をここでご紹介していただいて、みんなで共有できればありがたいですね。
もう一つ,深刻な問題は、会社内、あるいは組織内の常識と世間の常識が乖離してしまったことです。例えば、常識的には薬を飲み続けることは副作用もあって、健康にはあまりよくないことが多いです。薬の飲みすぎとアルツハイマーの関連も指摘されています。しかし、製薬会社に勤めていれば、大量生産、大量消費を促進するのが会社発展の最大のカギですから、ガンガン宣伝をやってガンガン売って、ガンガン儲けなければいけません。そのために、消費者が少しでも多く薬を服用するように、製薬メーカーは厚生労働省と医師会と密な関係、正に利権構造も作るようになりますね。本来、人の健やかな命を守る崇高な使命を持った立場の人たちにどれほどの道徳が、どれほどの倫理が残っているでしょうか?
悲しいことに、「道徳なき商売」ということに関しては、先進国は全て完全に失格ではないでしょうか? マネー資本主義経済では表向きはそれらしい大義名分を謳っておきながら、本音では「道徳なんぞ、糞くらえ」と吐き捨てているのが珍しくありません。もちろん皆無だというつもりはありませんが。
こんな経済がいよいよ断末魔の苦しみを味わうところまで追いつめられています。
次にドイツのスキャンダルの例を見てみましょう。(続く)
道徳なき商売 (続き)
暴走を始めているマネー資本主義経済下で如何に道徳が感じられているか、ドイツで起きた一大スキャンダルの例を見てみましょう。
それは、たぶん皆さんも耳にしたことがあると思いますが、ドイツの誇る自動車産業界で最も大きいフォルクスワーゲンがディーゼル車の排気ガスの不正を行ったことです。
具体的には自動車が検査台に乗るとコンピューターがそれを感知して、排気ガスが規制値をクリアするように作動する装置を付けたのです。そして、普通に道路を走行中は規制値の何倍もの排気ガスを出して走るようにしていたのです。中には規制値の40倍もの排気ガスを出す車もあったそうです。2014年にアメリカで最初にこの知的犯罪が発覚し、その後全世界で不正が行わていることが判明しました。
この不正プログラムを装着した車はアウディとポルシェを含むグループ全体でなんと1074万台に上りました。
アメリカでの不正対象車は73万台と少なかったですが、当時の最高責任者であったビンターコルン会長が詐欺罪で訴えられ、フォルクスワーゲングループは総額で2兆3650億円の賠償金を払わされました。また、ドイツでは2018年に10億ユーロ(1300億円)の罰金を科せられました。
このような悪質な知的犯罪を世界を代表するフォルクスワーゲンが行ったというニュースは世界を駆け巡り、真面目なドイツ人がそんなことをするとは信じがたいと、世界中を唖然とさせたのでした。当時トヨタと販売シェア世界一を争っていた最中の出来事で、その競争に勝つために詐欺行為に手を染めてしまったのでした。
この詐欺行為によってフォルクスワーゲンとドイツ車に対する信頼は大きく傷つき、ドイツという国のイメージも大きく損なわれてしまいました。
ところが、話はこれでは終わらず、2018年にはドイツの名門であるBMWとメルセデスベンツにも同様の詐欺行為が疑われる事態となっています。さらには、フォルクスワーゲンはCO2排出に関しても不正があるのではとの疑惑まで起こっています。排気ガス不正はとても根の深い問題になっています。
では、一体なぜドイツを代表する、模範的な優良企業が揃いも揃ってそのような詐欺行為に手を染めるようになってしまったのでしょうか? 犯罪が実に知的で巧妙なので絶対に発覚するはずがないとでも思い込んだのでしょうか?
一説には、世界の市場はもはや開拓できるところがほとんどなくなってしまった飽和状態にあり、その中で競争はますます激化する一方なので、「もっと売り上げを!もっと利益を!もっと配当を!」と迫られる大企業の経営責任者は、東芝の一連の社長がやったように、決算書を改ざんするか、さもなくば人をだまして売り上げを伸ばすくらいしか他に方法がないのだという指摘があります。世界的大企業の経営陣はどこでもそこまで追いつめられているのだと言うのです。具体例は思い出せませんが、それを伺わせる事件が続いていると言います。
こう考えると、「マネー教」は自らが抱える矛盾、つまり、どこまでも貪欲であれという一方で、貪欲であればあるほど自分の首を絞めかねないという矛盾に至って、いよいよ自滅の方向に突き進みだしたと言えるではないでしょうか?その手口は簡単です。企業のトップを暴走させて、ブレーキを踏ませない。なんとも恐ろしいと思いませんか?
小川誠さんのFBページより