住み慣れた穴蔵から、一歩外に踏み出ると、
そこは〝 日の光
〟が煌き、
風が木の葉を揺らす音は、
静かな〝 生命のせせらぎ
〟となって、
彼の心に染みわたってきた・・・
〝 これほどまでに、
自然は美しかったのか・・・ 〟
長年住んだこの山に、
たくさんの〝 生命の息吹
〟が宿っているということを、
彼の心が、その澄んだ瞳が、
今になって初めて観じ入る・・・
その瞳には、かつて共にした魔界の亡者はなく、
邪な色の虚光は消え去り、
ただ〝 瞬く光
〟に見入る子供のように、
〝 生きる感謝
〟に浸る老者のように、
ただ、己の内から湧き出る、
生命の温かさ、柔らかさ、優しさ、
清らかさに満ち溢れ、
鳥の鳴き声は〝 祝福
〟に聞こえ、
風に揺れる木々の枝は、
彼を抱き入る世界の優しさにも感じられる・・・
その中に溶け入ることの素晴らしさを、
ありがたさを、
彼はその二本の足で立ち、地を踏みしめながら、
空にまで意識を溶け込ませ、
広がる生命の輝きと共に、
その〝 日の中
〟に見い出すのだった・・・
〝 昨日までの私はもういない・・・
私の邪な想いは、
あの方に清められてしまったのだ・・・ 〟
彼の心の中に、
かつては憎き敵と見ていた〝 釈迦牟尼
〟が、
〝 燦然とした光
〟を纏って輝いているのを、
目を閉じればすぐそこにいるかのように感じられた・・・
〝 生まれ変わったこの命、
私はもう、この場所に戻ることはない・・・
山を降り、あの方の〝 御働き
〟の末端にでも、
この命を使って頂きたい・・・
今やっと、この命をお返しして、
御仏の足元からでも使って頂きたい・・・ 〟
彼は山を降りるべく、
〝 仏弟子の一歩
〟を踏み出した・・・
目にみえる景色は彼の心に、
もはや今までのような、
〝 形としてあるだけの物 〟には映らなかった・・・
踏みしめる大地一歩一歩から、
〝 躍動する世界の理(ことわり)
〟が感じられ、
周りの木々植物、虫、動物からは、
〝 祝福する天の意志
〟が感じられ、
空は澄みわたり、
差す〝 日の光
〟から、
それらはすべて、
己の中にある世界にも感じられる・・・
おなじ光を宿し、
そこから種々の色を放たれ、
この世界を彩る様々な生命たちが、
彼の心に涼しく高らかな響きとなって、
流れてくるのだった・・・
仰ぎ見て、
空に広がる仏性の、
端からでも働きたくに、
心に響くそのままを、
〝 歩み
〟としてお返ししたく・・・
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