太田裕美さんの声質を研究中! | 昭和レトロサウンド考房

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 太田裕美さんの声質を研究中!

 われわれの世代、特にわたしのような裕美ファンにとっては「神聖にして侵すべからず」というべき声であり、測定にかけること自体畏れ多いことだが、この美声の本質に迫りたい一心ゆえの探求、なにとぞご容赦願いたい。

画像は母音「あ」のフォルマント分布図。
ある対象の"特徴"を知るためには、当然ながらその対象以外の多くの事例と比較しなければならない。 しかし、日本人の声の高次フォルマントの調査文献は意外に少ない。特に日本人女性についての調査資料は探しきれなかった。 そこで前回の研究対象であった南沙織さん(以下 敬称略)の「あ」と比較することにした。
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第1フォルマント(F1)、第2フォルマント(F2)は音韻(言葉としての弁別)を表すピークで、両者ともに平均的な「あ」の配置に見事に一致している。
第3フォルマント(F3)は音韻性と個人性の両方に寄与するピークだが、ここも両者ほぼ一致している。

注目点は4000Hz台に分布する第4フォルマント(F4)である。ここでは両者で大きな違いが見られる。 第4フォルマントは、調音(唇、舌、歯、鼻腔で音を意図的に作る行為)の影響を受けず、「喉頭室の容積」といった個々人の身体的特徴により決まるとされる。すなわち最も個人性を表す指標といえる。
太田裕美が4000Hz台の上半分に分布しているのに対し、南沙織は、下半分にピークが見られる。この違いを聴感上のイメージとして言葉で表現するのは難しいが、太田裕美の声は比較的「幼く」聴こえ、南沙織の声は「大人びて、低音が艶やかに」響くといえるのではないだろうか。

竹内まりあさんの声を分析したことはないが、低音の魅力あふれる彼女の声もおそらく南沙織同様、4000Hz台の比較的低いところにF4が分布しているものと推測する。
 


今回図示したのは「あ」のみだが、「い」、「う」、「え」、「お」のF4についても、ほぼ同様の結果が得られた。 太田裕美の歌声のあのケナゲな愛くるしさは、F4の分布位置によるものが大きいのかもしれない。
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加えて独特な「舌足らずさ」も太田裕美の大きな魅力である。たとえば「い」の発音は総じて「え」に近い。こういう特徴は母音ごとに切り出してみないとわからない。人間の耳がいかに都合よく補正しているかがよくわかる。

さて、次の段階ではフォルマント近似者の協力を得て太田裕美の歌声の再現にトライしてみたい。