南沙織らしさは鼻音化がカギか | 昭和レトロサウンド考房

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~ 南沙織らしさは鼻音化がカギか ~

 憧れの南沙織さんの歌声を再現するべく フォルマント近似者 の協力を得て2015年から研究を続けているが、なかなか納得ゆく仕上がりにならない。かれこれ3年も経過してしまった。
聴き手が歌声の個人性を識別できるのは母音(a,i,u,e,o)の 周波数特性 によるところが大きい。

 会話音声においても一般に母音は子音に比べパワー持続時間が長いが、歌声の場合は、歌であるがゆえに当然に母音の持続時間が長くなる。かかる理由から研究時間の9割を母音の分析加工に捧げてきた。

 母音の個人性は 共鳴周波数のピーク(フォルマント) を特定し、そこを強調することで理論上再現できる

 たしかに、母音区間だけを短く切り出し再生させてみると、その瞬間はけっこう南沙織さん声に聴こえる。 しかし、複数の音節にわたって聴くと似ていないのである。これには正直まいった;;
 おそらく、ひとつの母音の区間においてもなんらかの 経時的変化 が生じており、とりわけ 鼻音化 による変化が大きいのだろうと想像はついた。
 実際、恥ずかしさに耐えながら自分でモノマネして歌ってみると要所要所で無意識に鼻声にしている(いやはや自分の声は聴くにたえない;;)。

 この鼻音がやっかい。共鳴周波数のピークであるフォルマントとは逆の「谷」にあたる部分アンチフォルマントを特定しなければならない。アンチフォルマント推定に関する文献はおそろしく少ない。今の私の実力ではアンチフォルマントを数学的に求めるのは無理であろう。

 ならば、南沙織さん声「ん」のスペクトルを眺めてみよう。
最も南沙織らしく聴こえる「ん」を2個選び出し FFT解析


 


 スペクトル図を遠目でぼんやり眺めて見ると、なんとなく3,000Hz と 6,000Hzあたりに負のベクトルを感じる。
それが正しければアンチフォルマントは3000Hz間隔で分布してるのかもしれない。
(※注:鼻腔のような分岐音響管の場合、共鳴周波数の分布は複雑で必ずしも等間隔とは限らない)
 9000Hz以上の高域は、個人性識別には大きく寄与しないので無視してもよいだろう。 ある母音に対して3,000Hzと6,000Hzあたりのパワーを下げてみた。なるほど鼻声だ(鼻音といっても「m」と「n」と鼻濁音とでは厳密にはフォルマント構造が異なるのだが)。

 目標達成にはまだまだ遠いが、フィルター加工により(聴いた感じ)ある程度近似できたことは、大きな前進でありました。


 

(後日、加筆・訂正する場合があります。)