「髪を切る」
聡太郎が入院してからは美容院にいく時間がなく、肩上だった髪の長さも肩下にまで伸びてしまいました。
入院期間中、願掛けではないのですが、次に髪を切りに行けるのは聡太郎の移植が成功して元気になってから・・・。と、漠然と思っていました。
しかし、聡太郎は移植を受ける事が出来なくて、私は髪を切る機会を失くしました。
日々の中で到来しては去っていく様々な感情や記憶の中で、漠然と思っていたはずの髪を切りに行くという機会を失った私には、髪の毛は切れないものになりました。
よく、大好きな人や尊敬する人と握手をした後に、手を洗えない・・・という映像や表現が使われますが、私には、そういう豊かな感情的躍動感はありません。平気で手を洗えてしまうタイプなのかも知れないです。
でも、ある時に髪の毛先を見ていたら、この髪の毛を聡太郎が触っていたことは事実なんだな~と、思いました。
皮膚はターンオーバーを繰り返し、(細胞は)どんどん新しく生まれ変わっていくけれど、髪は、髪の毛を切るまでは過去の記憶が(その細胞に)残っているのかも。だから、遺髪があるのかな・・・と、妙に心に迫る自分勝手な納得をしてみたりしました。
そんな、こんなの、私にしか意味のない、自分自身だけの葛藤をしてみているうちに、次に髪の毛を切るならいつなんだろう・・・。と、考えました。
みなさまから、「そうちゃんはママと一緒にいるよ。」「心の中にそうちゃんは生き続けています。」など、多くの励ましを頂きました。本当にありがとうございます。
しかし、私は、こんなにも聡太郎に会いたいのに、あの柔らかい髪の毛やモチモチの肌や頬、力強く握り返してくれた手や指に触れられない事がとても辛くて、こんなに触れたいのに触れられないのに、そうちゃんが私の傍に居るなんて、そんなふうに思えるなんて、ありえないんじゃないか・・・。と、思っていました。ごめんなさい。
だから、「そうちゃんが、私の中に(私の傍に)いる。」そう感じることが出来たときに髪の毛を切る!ということに決めました。
髪型7:3です!