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● メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ89歳で死去~ブラック・ムーヴィーの立役者 

 

【Melvin Van Peebles Dies At 89】

 

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(本作・本文は約3000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ6分から3分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと10分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

 

 

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● メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ89歳で死去~ブラック・ムーヴィーの立役者 

 

【Melvin Van Peebles Dies At 89】

 

訃報。

 

メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ Melvin Van Peebles 俳優、映画監督、作家、レコーディング・アーティスト、2021年9月21日ニューヨーク・マンハッタンの自宅で家族に看取られながら死去した。89歳。いわゆる「ブラック・シネマ」の世界の開拓者。

 

https://nyti.ms/3uhhcFb 

 

1932年8月21日イリノイ州シカゴ生まれ。1950年代にサンフランシスコでケーブルカーで仕事をしているときの経験を元にちょっとしたストーリーを書き、本にした。ケーブルカーの客から、「君はフィルムメイカーになったほうがいい」と言われ、その気になったが、映画の作り方などまったく知らなかったので、独学で独自に作り出した。約11分ほどのショートフィルムを作り、それが徐々に発展した。

 

1950年代後期には一時期メキシコに居住していたが、その時期に息子のマリオ・ヴァン・ピープルズが生まれている。

 

1965年から66年にかけて、5号ほどだったが、「マッド」マガジンのフランス語版の編集長に。1968年、初の長編映画『ストーリー・オブ・ア・スリーデイ・パス』を製作。これが認められ、その後1970年、メジャーのコロンビア・ピクチャーでコメディー映画『ウォーターメロン・マン』を製作。もう一作をはさみ、1971年、完全インディで『スウィートバックス・バッドアス・ソング』を製作・監督。製作費の一部5万ドル(約1800万円)はビル・コスビーから借りたものだという。これが予想以上に大ヒット。

 

同作では音楽でまだ無名だったアース・ウィンド&ファイアーを起用。白人体制に強烈に反発したその作風は賛否あったが大ヒット。

 

息子のマリオ・ヴァン・ピーブルズはそれから30年後、2003年に『メイキング・オブ・バッドアス』的な作品『バッドアス』を製作、発表した。

 

ちなみに1980年代は株取引などで収入を得ていたという。

 

その後、ドキュメンタリー映画などでフィーチャーされてきた。

 

2012年にはヴァイナル・オンリーのアルバム『ナー・ナー・モフォー』をリリース。

 

 

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作家として著作を発表しながら映像メディアに進出。「ブラック・シネマ」がまだメジャーから認められずインディでやりだした頃からの映像作家。1971年発表映画『スイート・スイートバック・バッドアス・ソング』はインディながらヒット。

 

白人体制に強烈に反発したその作風は賛否あったが大ヒット。以後のブラック・シネマに門戸を開いた。以後のブラック・エクスプロイテーション映画、さらに次世代のスパイク・リー、ジョン・シングルトン、アーネスト・ディッカーソン、ヒューズ兄弟、息子のマリオ・ヴァン・ピーブルス、さらにその次の世代バリー・ジェンキンス、ライアン・クーグラーらのブラック映画監督の活躍の礎を作った。

 

息子のマリオ・ヴァン・ピーブルス(写真)も俳優、監督として活躍。マリオは1991年作『ニュー・ジャック・シティー』を監督。メルヴィン&マリオは『スイートバック~』が日本再公開された2005年8月来日した。そのときのインタヴュー

https://bit.ly/3u7Ow1g

 

(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)

 

メルヴィン曰く「私は『ソウル・ミュージック』は、黒人コミュニティーにおいてとても重要な位置をしめると考えていたので、映画の中においても音楽はものすごく重要なものだと思っていた。だから、この映画では音楽を重要視した。

 

だからこの映画は『スウィート・スウィートバック』ではなく、映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』と、『ソング』がくっついているんだよ。以来、黒人映画、白人映画問わず、音楽というのは映画においてものすごく重要な位置になった。

 

映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』を理解するのは難しいかもしれないが、これなしに(あとに続くブラック・ムーヴィー)、『シャフト』や『スーパーフライ』はでてこなかっただろう」(2005年のインタヴューより)

 

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Sweet Sweetback's Baadasssss Song & "Baadasssss!"

2005-08-26

 

【映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』再公開】

 

メイキング。

 

ブラック・ムーヴィーの歴史に残るユニークな映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』(1971年)がかつて93年に日本でも公開されたが、これがデジタルリマスターされ、2005年10月1日からリヴァイヴァル公開されることになった。また、同時に、この映画のメイキングとも言える『バッドアス!』(2003年)も日本初公開される。これにともない、両作品の監督、前者がメルヴィン・ヴァン・ピーブルズ(1932年8月21日生まれ=73歳)、後者がその息子のマリオ・ヴァン・ピーブルズ(1957年1月15日生まれ=48歳)が来日、インタヴューする機会を得た。この模様は近く『ソウル・ブレンズ』内でご紹介する。このインタヴューには、日本語版字幕を監修されたオーサカ=モノレールの中田亮さんも同席され、僕を含めて4人で話をした。

 

二人は、さすがに宣伝しに来てるだけあって、おそろいで『バッドアス!』のTシャツを着ていた。マリオはかなりかっこいい。あの『黒豹のバラード(Posse)』(1993年)、そして、『ニュージャック・シティー』(1991年)でも有名。

 

父親が作ったブラック・ムーヴィー史上に残る作品『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』、そして、その息子が作ったメイキング『バッドアス!』という組合せはなかなかおもしろい。オリジナルが制作された70年、マリオは13歳だった。71年に発表されてから32年後に、そのメイキングを作ったわけだ。

 

マリオが振り返る。「歴史に残るこの作品のメイキングを作るのもいいと思った。そこで、父にこのメイキングを作ってもいいか、と尋ねた。そしたら、父は『もちろん、いいよ』と言ってくれた。だがその後に『でも、お前は、私から権利を買わなきゃだめだ』と言われたんだ。(笑) もちろん、買ったよ。(笑)」 

 

父親メルヴィンは映画『バッドアス!』(メイキングのほう、2003年作品)を、試写会まで見たことがなかったが、試写の席で、父親が画面を見ているのを見て、息子のマリオも感無量だった。つまり、父は、息子が演じている自分の姿を見ている、からだ。

 

映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』は、いわゆるブラック・ムーヴィーが盛り上がり始める1972年より前にリリースされた。そうしたブラック・ムーヴィーの歴史の出発点にある作品とも言える。内容は、シンプル。いろいろな状況から白人警官を殴ってしまった黒人が、彼らからずっと逃げ続けるというもの。

 

メルヴィンは、この映画の製作資金をすべて自分で集め、製作し、音楽を作り、配給した。まったくハリウッドの資本に頼らず、独立性を持って作り上げた。ハリウッドの製作スタジオから、売れるためにはこうしたほうがいい、この要素をいれろ、といったことはまったくなく、完全にクリエイティヴ・コントロールを得ての作品だった。

 

メルヴィンが熱く語る。「当時(1971年頃)、ブラック・ムーヴィー・シーンなんてものはなかった。ハリウッドが作る映画の中にちょっと黒人のことを描いた作品がある程度だった。私は『ウォーターメロン・マン』をコロンビア・ピクチャーズで作った。まあ、悪くはなかった。ゴードン・パークス(黒人監督)が作り、オージー・デイヴィス(黒人監督、俳優)も作っていた。だが、どれも黒人コミュニティーの『ソウル』を描ききれていなかった。そこで、そうした『ソウル』を描いた作品を作る決意を固めたんだ。そして、ひじょうに興味深いことに、私は『ソウル・ミュージック』は、黒人コミュニティーにおいてとても重要な位置をしめると考えていたので、映画の中においても音楽はものすごく重要なものだと思っていた。だから、この映画では音楽を重要視した。だから、この映画は『スウィート・スウィートバック』ではなく、映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』と、『ソング』がくっついているんだよ。以来、黒人映画、白人映画問わず、音楽というのは映画において、ものすごく重要な位置に置かれるようになった。映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』を理解するのは難しいかもしれないが、これなしに(あとに続くブラック・ムーヴィー)、『シャフト』や『スーパーフライ』はでてこなかっただろう」

 

彼はそれまで音楽を本格的に作ったこともなかったが、この映画のために音楽を作ろうとした。もちろん、楽譜も読めないし、どのように音楽を作っていいかもわからなかった。そこで、彼はピアノの鍵盤に数字を振り、自分が作るメロディーを数字で書き、自分の音楽を作った。そして、自分の思い通りの音を作ってくれる新人アーティストを探した。すでに名前があり、自分たち独自のサウンドを追求するアーティストではなく、メルヴィンが言うことをすべて言った通りに再現してくれるミュージシャンを探した。たまたま秘書のボーイフレンドに、当時はまだ無名だったアース・ウィンド&ファイアーのメンバーがいて、相談するととんとん拍子に話が進み、彼らが音楽を付けることになった。

 

メルヴィンは「そう、私は86の鍵盤に数字をつけた。88(ピアノの鍵盤は88)じゃないんだ。2つほど、音がでないキーがあったんでね」と笑う。

 

いかにもインディ映画という趣のB級作品だが、メルヴィンが言うブラック・コミュニティーのソウルを描いた映画という意味で、また、ブラック・ムーヴィーの歴史の出発点という点で大きな意義のある作品と言えるだろう。

 

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映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』(1971年作品)

2005年10月1日(土曜)からユーロスペースでレイトショー公開

 

映画『バッドアス!』(2003年作品)

(映画『スウィート・スウィートバック、バッドアス・ソング』のメイキング)

2005年10月1日(土曜)からシネセゾン渋谷でレイトショー公開

 

ともに配給宣伝・ミラクルヴォイス

 

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ENT>MOVIE>”Sweet Sweetback’s Baadasssss Song” & “Baadasssss!”

 

 

 

 

 

 

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