◎松尾潔のメロウな夜間授業~R&Bの愉しみ~第一回~ベイビーフェイスと「メロウという名の魔法」~テンダー・ラヴァーズ(レポート・パート1)
【Mellow Night Class #1 : Babyface】
夜間授業。
松尾潔さんが満を持して自身のトークショーを開催。というので、その初回にさっそく参加した。『メロウな夜間授業』と題されたこれは基本毎月第3月曜(7月と9月が第2月曜、8月が休み)開催で、2020年9月まで全10回。10回分の講義のテーマがすでに発表されている。ただしあくまで予定で微調整はあるかもしれない。会場は、僕も『プリンス・フォーエヴァー』のトーク・イヴェントを2019年6月7日に行った日比谷ビルボード・カフェ&ダイニング。
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12536253494.html
10回の講義内容(予定、1回目は終了)は次の通り。
【夜間授業 テーマと今後の日程】
第1回 2019年11月18日(月)「ベイビーフェイスと<メロウという名の魔法>」Tender Lovers 90’s R&B最強のソングライター・ベイビーフェイスと、彼のメロディーの語り部たちについて。
第2回 2019年12月16日 (月)『スティーヴィー・ワンダーと「モータウン・レコード」』
第3回 2020年01月20日 (月)『ホイットニー・ヒューストンと「クライヴ・デイヴィス」』
第4回 2020年02月17日 (月)『キース・スウェットと「ニュー・ジャック・スウィング」』
第5回 2020年03月16日 (月)『マーヴィン・ゲイと「イイ男はつらいよ」』
第6回 2020年04月20日(月) 『メアリー・J・ブライジと「ヒップホップ・ソウル」』
第7回 2020年05月18日(月) 『ジャネット・ジャクソンと「アメリカの妹たち」』
第8回 2020年06月15日 (月)『アイズレー・ブラザーズと「家族、尊くて厄介なるもの」』
第9回 2020年07月13日 (月)『ルーサー・ヴァンドロスと「ニューヨーク・サウンド」』
第10回 2020年09月14日(月) 『ディアンジェロと「ニュー・クラシック・ソウル」』
予約方法 (予約開始日になると予約ができるようになります。ピ―ティックスのサイト)
https://billboardcafe-kc.peatix.com/
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ソウル・フード。
満員御礼イヴェントで当日券発売はないので、早めの時間からお客さんが集まっている。
松尾さんの壇上前には、有名な「月ユニ会」(松尾さんがかつてやっていたJ—WAVE『月曜ユニヴァース』リスナーたちの集い)メンバーや、松尾ファンと思われる人たちが集結。一方、おもしろかったのが、「動く松尾潔を初めて見る人」という問いにけっこう手が上がったこと。ラジオで聴いているファンが初めて興味津々でやってきたようだ。
なんと松尾さん、授業で話すことを簡単にメモ書きしたレジュメを作成、それをビルボード・カフェ&ダイニングとNever Too Much Productions (松尾さんが代表を務める音楽制作チーム)のダブルネーム入り特製ファイルの中にいれお客さん全員に配布。この特製ファイルは以後も日付が毎回違うものがでてくるという。つまり、10回参加すると松尾潔の顔入りクリア・ファイルが10枚集まる。その顔写真は、毎回同じだが日付は変わる。さらに初回参加者だけには文具店デルフォニックスの立派なノート(約14センチx18センチ)がプレゼントされた。授業の内容をメモするもよし、秘密の日記にするもよし。
そして、もうひとつすごいのが、目・耳・舌の五感を使った授業ということで、「メロウ・ソウル・フード」という名のアメリカ南部的ソウル・フードが松尾潔プロデュースで提供されたこと。力入ってる。
(写真)
メニュー。
それぞれにソウル・ヒットに関連したこじゃれた名前がつけられている。ご覧の通り、チキン&ワッフルに「エスカペイド」、マカロニ&チーズに「ロニ」といった具合だ。どれも美味だった。毎回いくつかプレイトを変えていきたいという。
本編のレジュメは次の通り。
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はじめに。
・メロウとは何か:メロウはいつも過去形
・R&Bの愉しみ、その本質:The Changing Same 変わりゆく、変わらないもの
ベイビーフェイス
・R&B史上最高のソングライター:歌たち、歌手たち
・本名ケネス・ブライアン・エドモンズ、1958年4月10日、米国インディアナ州インディアナポリス生まれ
・同時代の並走者たち
・モダンR&Bの定義者:ラヴ・オア・ラスト ロマンスの回帰 音楽と物語の関係 伝統の更新
・プロデューサー革命:ラフェイスが果たした役割 目線の高さ 量か質か
・音楽的達成:ザ・ソング・ハズ・プライオリティ 作品の特色 童顔印のメロウ
・アメリカ黒人と映画
・私生活とクリエイション
・日本での評価、影響
・今とこれから
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反芻。
これをベースに自由自在にトークを繰り広げた。それはまるでソウル・バーでお酒を飲みながら話をするような雰囲気。
夜間授業を今回始めた由来などから授業は進む。いちおうマックブック2台を用意し、音楽と写真などを映し出す。自分でそれらも操作。
第一部、一曲目はベイビーフェイス関連曲が厳選と言いながらなんと270曲入ってるパソコンからシャッフルで選曲。そしてでた曲はボーイズだった。(かかった曲は下記セットリスト参照)
キーワード的に覚えているもの、僕がメモしたもの。
「過去を変える」「過去こそ変えられる」「過去の意味を変える」→「反芻(はんすう)」。
「向田邦子(のエッセイ『反芻旅行』を朗読して)、これって、R&B!「Ti Amo」!」
「伝統の更新」
++日本ではベイビーフェイスが軽んじられているという話
++ミュージックマガジンの「R&Bベスト100アルバム(1988~2018)」、この中にベイビーフェイスの「ベ」の字もないという話。
++「R&B、メロウは感じることはできても伝えることは難しい。しかし、メロウの美学を熱く語っていることに矛盾(笑)」
++14歳のケニー(ベイビーフェイス)が地元にやってくるマイケル・ジャクソンになんとかして会う方法を考えた話。
++1972年、ケニーが14歳のときジェームズ・スチュワート(当時の人気白人俳優)の声色を真似てコンサートプロモーターに電話するというのは、今年公開されたスパイク・リーの『ブラッククランズマン』と同じ年、同じ人種の構図ではないか。これはまさにこの日のハイライト的指摘。おもしろかった。そして、そこからスパイク・リー話へ展開。
++その舞台となったインディアナポリスのヒルトン・ホテル。
++ベイビーフェイスとダリル・シモンズ。
++スパイク・リー、マイケル、ベイビーフェイス、「オン・ザ・ライン」。
++ケニーは1958年生まれ。1958年生まれと言えば、ほかにアニタ・ベイカー、プリンス、マドンナ、そして、マイケル・ジャクソン。
という話になったときに、一緒に授業を受けていた「同じトークショーを僕がやってもこういう客層は絶対来ないなあ」と言っていたKダブ・シャインが、「ソウル界は1958年が当たり年なんですね。ラップ界は1968年が当たり年なんですよ。LLクールJ、ラキーム、ビッグ・ダディー・ケーン、クール・G・ラップ、EPMDのエリック・サーモン、デラ・ソウルの顔の丸いデイヴ、ブランド・ヌビアンのロードジャマー、ウィル・スミス、そして、Kダブ!」と松尾さんに勝るとも劣らぬ勢いで解説してくれた。
(この項パート2に続く)
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当日松尾さんがかけた曲、セットリストは次の通り。ちょっと抜けてるかも。間違いあればお知らせください。修正します。
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■セットリスト
Mellow Night Class #01 setlist
Talk & DJ : Matsuo Kiyoshi
(一応かけたもの。BGMは一部)
November 18, 2019 @ Billboard Café & Dinning Hibiya
First set
Show started 19:36
M01 A Little Romance – The Boys
BGM Superwoman – Karyn White
BGM Everytime I Close My Eyes - Babyface
M02 On The Line – Michael Jackson
Ended 20:36
Second set
started 20:56
M01 Hurt You – Toni Braxton & Babyface
M02 Water Runs Dry – Boyz II Men
M03 Superwoman – Karyn White
M04 Simple Days - Babyface
M05 Simple Melody (KC’s Be-Mellow Remix) – Jon B feat. Bootsy Collins
M06 Missing You – 平井堅Ken Hirai
M07 In The Mood – 久保田利伸Toshinobu Kubota
M08 Diggin’ On You – 安良城紅(BENI)
M09 Tender Lover – 田原俊彦 Toshihiko Tahara
BGM You Make Me Feel Brand New – 田原俊彦
M10 In The Mood – The Whispers
Matsuo Kiyoshi’s Babyface Mellow Top 10
10位から1位までカウントダウン。
10位 Water Runs Dry (Strat Mix) / Boyz II Men
09位 In The Mood / The Whispers
08位 They Don’t Give / Jordin Sparks
07位 Roses Are Red / Mac Band
06位 Right Down To It / Damian Dame
05位 Ready Or Not / After 7
04位 Whip Appeal / Babyface
03位 Exhale (Shoop Shoop) / Whitney Houston
02位 Rock Wit’cha / Bobby Brown
01位 Sweet November / The Deele
Show ended 22:37
(2019年11月18日、ビルボード・カフェ&ダイニング日比谷、松尾潔トークライヴ)
ENT>MUSIC>EVENT>Matsuo, Kiyoshi
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