〇 大坂なおみのヴィクトリー~今後10年は続く「大坂王国」の始まり | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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〇 大坂なおみのヴィクトリー~今後10年は続く「大坂王国」の始まり

 

【It’s Just Beginning Of “Osaka Okoku” Osaka Empire】

 

勝利。

 

2018年9月8日(土)(現地時間)全米オープン・テニス女子シングルス決勝で、大坂なおみがセレナ・ウィリアムズを2-0で破り、優勝した。

 

「寝てから見るか」「見てから寝るか」、結局僕は「寝てから見る」で、セカンドセットの途中から見始めた。まもなく、セレナが審判のカルロス・ラモス氏に何かすごい勢いで言っているのが映った。

 

何がどうなったのか、簡単に整理してみよう。

 

第二セットの第2ゲームの途中で、セレナのコーチ、パトリック・モラートゥグルーがコーチング(ジェスチャーで観客席からサインを出して、指示をすること)をしたことで、それを見たラモス審判が、セレナに「コード・ヴァイオレーション(警告)」(2度これを取られると1ポイント・ペナルティーになる)を与えた。この時に、セレナは「私は絶対、コーチングは受けていない、勝つためにコーチングを受ける必要はない。そんなずるいことは決してしない」と審判に強い調子で言った。そして第5ゲームでセレナが自身のサーヴィスゲームをブレイクされたところで、イライラが頂点に達した彼女はラケットをコートに叩きつけ、壊してしまう。そこで第2セット、セレナ3-2大坂からの第6ゲーム大坂のサーヴィスゲームで、審判は2度目の警告で、1ポイントのペナルティーを科した。つまり、大坂15‐0から試合が始まることになった。ここでも激高。

 

その後、大坂はサーヴィスをキープ、3-3に。そして、次の第7ゲーム・セレナのサーヴィス・ゲーム、30‐40から大坂がパッシング・ショットを決め、ブレイク。大坂の4-3に。そしてここのブレイク・タイムに、再びセレナがラモス審判にかなり厳しい言葉でクレイムをつけた。これが審判の逆鱗にふれ、暴言を吐いたことで、審判は毅然とした態度で、セレナに「ゲーム・ペナルティー(1ゲームを相手に与える罰。ポイント・ペナルティーよりはるかに大きい)」を科したのだ。大坂はサーヴィスゲームで1球も打つことなく、大坂の5-3となった。

 

次のセレナはサーヴィスをキープ、大坂から見て5-4、そして、大坂のサーヴィン・フォー・ザ・チャンピオンシップ。これを見事に決めて、大坂はチャンピオンになった。

 

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コーチング。

 

ポイントはいくつかある。

 

まず、コーチングについて。

 

これに関しては、パトリック・コーチが「コーチング」自体を、「ほかのコーチも誰もがやっていること」と認めている。

 

https://olympics.nbcsports.com/2018/09/08/serena-williams-naomi-osaka-us-open-chair-umpire/

 

ただし、パトリックは認めたが、それをセレナが見たか、受け取ったかはわからない、としている。

 

セレナが見たか見ないかはセレナにしかわからないが、「ずるをするくらいなら、負けた方がいい」とまで言っているので、見ていない可能性は強い。

 

しかし、コーチがジェスチャーをしてサインを送っていたことが事実であれば、それを発見した審判はペナルティーを科すことは自然で当然だ。

 

問題は、セレナが言うように、この審判が相手が女性だから、あるいは黒人だから強くペナルティーを与えたかどうか、だ。セレナは、あなた(審判)は、「私の人格を攻撃している」「嘘つきだ」「私からポイントを盗んだ」とまで激高していい放った。

 

パトリック・コーチ(セレナのコーチ)の言い分は、「大坂のコーチ、サシャだって、ナダルのコーチだって、1ポイントごとにコーチング(ジェスチャーを送って)している。なのに、なぜ、セレナだけ罰を与えるのだ」と。

 

ラモス審判が人種差別主義なのかどうか。これも本人に聞かなければわからない。

 

このコーチング問題自体にメスを入れるべきなのだろう。

 

一方、セレナの執拗な審判への食い下がりはどうなのか。これまでにも、セレナとしては全米オープンではラインパーソンの判定で不利なことがあったなどの過去があったために異様に反応したのかもしれない。

 

スポーツの世界で、審判は絶対だ。その審判に激しく抵抗することがどこまで許されるのか。もちろん、審判にも誤審はある。このあたりのバランスをどうとるべきか。セレナの抗議は正当だったか、やむを得なかったのか。

 

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パフォーマンス。

 

1ポイント、1ゲームのペナルティーはあったが、大坂のパフォーマンスは見事だった。この全米の間、試合ごとにどんどんと強くなってきている印象を持った。たぶん、20歳で、今、まさに育ちざかり。一日一日、一試合ごとに力をつけて強くなっているのだろう。そして、セレナは決して本調子ではなかった。なかったが、ベースに持つ強さは計り知れない。

 

そして、大坂のこのパフォーマンスは、こうしたゴタゴタがなくても、堂々とセレナを打ち破ったと思う。

 

セリーナがゲーム・ヴァイオレーションを科せられたときに何度も「これはフェアじゃない」と半分泣きながら訴えたところも印象的だ。セリーナもかわいそうだし、大坂もかわいそうだ。何がいけなかったのか、もういちど、検証すべきだろう。

 

しかし、大坂のこの強さは、新しいコーチのたまものなのか。大坂の勝利は、なんら曇ることはない堂々たるものだ。

 

来年またここの全米のコートで、再度セレナ対大坂で当たって、決勝戦を戦えばいいと思う。あるいは、そこに行くまでの全豪、全英、全仏でもいい。

 

(USオープン主催者はナオミ大坂にしたことを恥ずべき、という記事)

 

It’s shameful what US Open did to Naomi Osaka

By Maureen Callahan September 8, 2018 | 8:35pm

https://nypost.com/2018/09/08/its-shameful-what-us-open-did-to-naomi-osaka/?utm_source=twitter_sitebuttons&utm_medium=site%20buttons&utm_campaign=site%20buttons

 

2018 US Open Highlights: Serena Williams' dispute overshadows Naomi Osaka's final win | ESPN

https://www.youtube.com/watch?v=uiBrForlj-k

 

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大坂王国。

 

大坂の強さは、プレイ・スタイルは若干違うが、その強さと柔軟さと安定性においてグラフ王国の再現を思わせる。

 

セレナにあこがれてテニスを続けてきた大坂が、セレナ36歳(11か月)、大坂20歳(10か月)になったとき、全米オープンという頂点でがっぷりよつで戦い、ついに若者がかつての女王を倒した。アイドルが対等のライヴァルになった瞬間だ。

 

競技種目は違うが、かつて若武者(平幕)貴乃花(当時は貴花田)が大横綱千代の富士にぶつかり、その千代の富士を倒し、新たな時代を切り開いた。千代の富士はこれを機に引退。貴乃花時代の幕が切って下ろされた。この時(1991年5月)、貴乃花は18歳(9か月)、千代の富士は36歳(11か月)だった。

 

ひょっとすると、36歳という年齢は、下の世代から追いつかれ、そして、時には抜かされるターニング・ポイント的年齢なのかもしれない。

 

審判問題は大坂の偉業に一点の曇りをもたらすべきではない、という記事

Serena's Umpire Controversy Shouldn't Obscure Osaka's Achievement, Deserved Victory

By STANLEY KAY September 08, 2018

 

https://www.si.com/tennis/2018/09/08/naomi-osaka-serena-williams-us-open-final-umpire-chairman-celebration-deserve-victory?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=social-share-article&utm_content=20180909

 

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メンタル。

 

技術力のアップ、強さがメンタルを強くする。メンタルが強くなると、パフォーマンスが強くなる。そうした勝利のスパイラルに大坂はいるようだ。

 

ひとつ確実に言えることは、これだけのブーイングの中での勝利は彼女に多くのメンタルの強さを与え、これからの果てしない自信になるだろうということ。

 

大坂は、勝利者インタヴューで、「みんながセレナを応援していることは知ってました。こんな終わり方でごめんなさい」と言った。いや、大坂は謝る必要はない。

 

大坂の勝利は、そのパフォーマンスにおいてなんら恥じることのない堂々たる勝利だ。そして、これからおそらく10年は続く大坂王国の始まりだ。本当に歴史の一ページが記された。

 

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