〇アレサ・フランクリン 76歳で死去(パート2)~評伝 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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〇アレサ・フランクリン 76歳で死去(パート2)

 

【Aretha Franklin Dies At 76】

 

訃報。

 

「クイーン・オブ・ソウル」アリーサ・フランクリンが2018年8月16日午前9時50分(日本時間16日22時50分)、デトロイトの自宅ですい臓がんのため死去した。76歳だった。

 

1960年代から多数のヒットを放ち、1967年から8年間グラミー賞「R&B女性部門」を独占。合計18のグラミーを獲得。「ロック殿堂」発表初年度入り。チャートヒット100曲以上、ローリングストーン誌が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・シンガー」の1位、大統領就任式で3度の歌唱などなど、様々な栄誉、実績、評価を得ているアメリカを代表する女性シンガーだ。

 

全世界が追悼している。

 

左アンカー、ドン・レモン、右グラディス・ナイト

ベリー・ゴーディー・ジュニア、同じデトロイト出身で8歳の時から知っているという

 

評伝。

 

「クイーン・オブ・ソウル」(ソウルの女王)と呼ばれるアレサ・フランクリン(アリーサ・フランクリン)は、1942年(昭和17年=午年)3月25日、テネシー州メンフィス生まれ。4人兄弟(内3姉妹の真ん中)。

 

上から1938年生まれの第一子長女アーマ・フランクリン(2002年没、64歳)、第二子長男・セシル(1940年生まれ~1989年没、49歳)、第三子・次女アレサ(1942年生まれ~2018年没、76歳)、第4子三女・キャロリン(1944年生まれ~1988年没、44歳)がいた。つまり4兄弟姉妹のうち、アレサは3人を失い、彼女だけになっていた。父親は教会の牧師。アリーサが5歳の時に、デトロイトに一家で移住。以後、デトロイト在住。

 

デトロイトでは、父C.L.フランクリンが地元の名士とも言える神父で、幼いころからゴスペルに親しんだ。1960年、コロムビアと契約。「トゥデイ・アイ・シング・ザ・ブルーズ」でデビュー。その後、1966年まで同社で、ブルーズ、ジャズなどを録音。一定の評価は得たが、大きくブレイクすることはなかった。

 

1967年ニューヨークのインディ・レーベル、アトランティック・レコードのプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーがコロムビア時代からアレサに着目し、コロムビアとの契約が切れたのを機に、アトランティックに迎え、路線は当時の流行りのリズム&ブルーズで録音。

 

アレサたちは、アメリカ南部アラバマ州のマッスル・ショールズにあるフェイム・スタジオに出向き、同地のミュージシャンと録音。多少の紆余曲折はあったが、ここでレコーディングした「アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・マン」がヒット。新路線が当時のR&B界で大いに受けることになった。以後この路線で次々と大ヒットを重ね、1960年代にはアレサ・フランクリンは押しも押されぬ女性R&Bシンガーとなった。

 

この時期に、アレサは「リスペクト」(1967年、ソウル1位、ポップ1位)、「チェイン・オブ・フールズ」(ソウル1位、ポップ2位」、「シンク」(1968年ソウル1位、ポップ7位)、「コール・ミー」(1970年、ソウル1位、ポップ13位)、「デイ・ドリーミング」(1972年、ソウル1位、ポップ5位)など20曲のソウル・チャート1位曲を生み出した。

 

また、この時期、1967年度(発表は1968年初頭)から1975年度まで連続8年、グラミー賞のR&B女性部門を獲得。同部門は「アレサの指定席」と呼ばれるほどになった。

 

1980年、アトランティックからクライヴ・デイヴィスの持つアリスタ・レコードに移籍。ここでも「ジャンプ・トゥ・イット」(1982年、ソウル1位、ポップ24位)、「フリーウェイ・オブ・ラヴ」(1985年、ソウル1位、ポップ3位)などコンスタントにヒットを放った。

 

多くの栄誉を受けてきたアレサだが、最近のものでは、2015年12月6日、ワシントンDCのケネディー・センターで行われた「ケネディー・センター名誉賞授賞式」席上で、今年賞を受賞したキャロル・キングを称えて、キングの作品「ユー・メイク・ミー・フィール・ライク・ア・ナチュラル・ウーマン」を熱唱。満員の観客のスタンディング・オヴェーションを受けた。その中には、オバマ夫妻、キャロル・キング本人、今年同じく受賞の小澤征爾氏らもおり、オバマ大統領は歌が始まった瞬間涙をぬぐうしぐさがカメラに捉えられた。

 

Aretha Franklin (You Make Me Feel Like) A Natural Woman - Kennedy Center Honors 2015

https://www.youtube.com/watch?time_continue=9&v=XHsnZT7Z2yQ

 

アリーサは、2017年2月、「レコーディングはするが、ツアーからの引退」を発表。

 

最近は、自身のレーベルから作品を出していたが、現在のところ最新作は、ワーナー・アトランティックからリリースされたアレサ・フランクリンとイギリス・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラの『ブラン・ニュー・ミー』(2017年)。ただこれはアトランティック時代の音源のマスターに、ロイヤル・フィルのオーケストラをかぶせた豪華な企画ものだった。

 

アレサ・フランクリン&ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ~アリーサ・アト

ランティックと

2017年11月09日(木)

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12326246101.html

 

ブラン・ニュー・ミー

アレサ・フランクリン

ワーナーミュージック・ジャパン (2017-11-15)

https://goo.gl/knLXMd

解説・吉岡正晴

 

2017年11月、ニューヨークでエルトン・ジョン主催のエイズ基金のためのショーに姿を見せたのが、公の前に出た最後となった。

 

主なアルバムは、コロムビア(1961年~11枚+ベストなど)、アトランティック(1967年~、19枚+ベストなど)、アリスタ(1980年~、11枚+ベストなど)、2008年以降、6枚+ベストなど12枚)など。

 

彼女は1960年代公民権運動にも参加、また、ウーマンズ・リヴ運動にも参加した。彼女の「リスペクト」、「シンク」などはその運動のアンセム(賛歌)にもなった。

 

■解釈力

 

アレサのシンガーとしてもっとも素晴らしい点はその楽曲の解釈力にある。これは機会あるごとにあちこちで書いてきたが、どんな曲でも、彼女が歌えば、「彼女のもの」になってしまうすごさだ。彼女の場合、他人の曲を「カヴァー」するのではなく、他人の曲を「力づくで奪って自分のものにしてしまう」感じなのだ。これは褒め言葉である。

 

たぶん、ひとたびその楽曲を歌うと決めたなら、それはその歌詞とメロディーに共感できるからであり、そのストーリーを自分なりに解釈して、味付けができるということを生まれながらに知っているようだ。これは天性としかいいようがない。

 

また、彼女は卓越したピアノ奏者であることもよく知られている。そして、彼女はなかなかいい曲を書くソングライターでもあった。

 

彼女は、ゴスペルからスタートしているが、ブルーズ、リズム&ブルーズ、ポップ、ジャズ、ラテン、果てはディスコ、ヨーロッパの音楽など、いかなる音楽も、そのずば抜けた解釈力で自分のものにしていった。つまり音楽を自分のものにする解釈力は、単に「楽曲」だけにとどまらず、「ジャンル」まで自分のものにしていたわけだ。

 

一般的には、多くのブラック・アーティストはゴスペルから始まり、リズム&ブルーズ、ジャズあたりで守備範囲が固まるものだが、彼女の場合、世界規模でどの音楽にも対応してきたように感じる。こうした世界規模の音楽を俯瞰していくスタイルは後のジャズ・ミュージシャン、ブラック・ミュージシャン(特にセルフ・コンテインド・グループ)に1970年代以降みられるようになるが、その先駆だったかもしれない。

 

おそらくそれは、何でも上手に歌えてしまうから、あらゆるものに手を出して、またそれをうまくやることが出来たのだろう。

 

そして、1960年代という時代にブレイクしたことで、公民権運動、性差別運動などにも積極的にかかわってきた。そういう意味で、時代の落とし子でもあった。

 

一ソウル・シンガーという枠を超えたひとりのアーティスト、ひとりの活動家、著名人という大きな存在になった。

 

(この項、続く)

 

■アレサ・フランクリンを知るには

 

伝記

アレサ・フランクリン リスペクト

デイヴィッド・リッツ

https://goo.gl/VzQ2cc

 

アトランティック時代の5枚

5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET/ARETHA FRANKLIN

ARETHA FRANKLIN(アレサ・フランクリン)

Warner Music (2010-02-27)

https://goo.gl/zWkbTa

 

Aretha Franklin Atlantic Albums Collection

ARETHA FRANKLIN

RHINO (2015-11-06)

https://goo.gl/KXzwMP

 

ベスト・オブ・アレサ・フランクリン:アリスタ・イヤーズ

アレサ・フランクリン

https://goo.gl/xeaj1U

 

Amazing Grace: The Complete Recordings

Aretha Franklin

Atlantic / Wea (1999-05-11)

https://goo.gl/c5hSHr

 

ブラン・ニュー・ミー

アレサ・フランクリン

ワーナーミュージック・ジャパン (2017-11-15)

https://goo.gl/sb19sd

 

OBITUARY>Franklin, Aretha (March 25, 1942 - August 16, 2018, 76 year old)