◎2018年「僕の100年構想」とドキュメンタリー映画『あしながおじさん~Daddy Long | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎2018年「僕の100年構想」とドキュメンタリー映画『あしながおじさん~Daddy Long Legs』

 

【My 100 Year Plot & Documentary Movie “Daddy Long Legs Premier】

 

(本原稿は、昨年10月末に聴いた玉井氏の「100年構想」にインスパイアーを受け、「僕の100年構想」と題して、年頭目標と定めご紹介するものです。恒例「ベスト・オブ」は明日付けからアップします)

 

完成。

 

それにしてもこんなことを思いつき、それを実行してしまう人がいるなんて、人間の可能性は本当に無限だと感銘した。

 

友人の大西恒樹さんにずいぶん前から誘われていたドキュメンタリー映画『Daddy Long Legs~あしながおじさん』の完成上映会が、東京四谷の上智大学で2017年10月26日(水)に行われた。映画上映後これを製作した映像作家篠田伸二さんのお話、そして、そもそもこれを始めたあしなが育英会の「玉ちゃん」こと玉井義臣さんのお話があり、大変おもしろかった。

 

映画のオフィシャル・ページ

http://daddylonglegs.jp/

 

予告編・ウガンダ編

https://www.youtube.com/watch?v=DokSC9CVI4c

 

予告編・東北編

https://www.youtube.com/watch?v=MS3dR6MimuU

 

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3年。

 

今から約100年以上前、1912年にアメリカで誕生した小説『あしながおじさん』にヒントを得て、交通事故遺児を支援する活動を行ってきた玉井義臣さん(1935年・昭和10年2月6日生まれ、82歳)のアイデアからすべてが始まった。彼は過去50年で約1000億円の資金を集め、それを両親のいない遺児に高等教育を授けるために与えてきた。それ自体がとてつもないことだが、数年前に思いついたアイデアがこれまたすごかった。

 

玉井さんは、アフリカの最貧国のひとつウガンダでエイズ蔓延で両親を失った遺児たちのための学校を建てていた。そこに集まる子供たちの天性の踊りや歌に感銘を受け、これを鍛えてブロードウェイに持って行こうと思いつく。そのために、イギリスをベースに活躍し、これまでにトニー賞などを受賞しているヴェテランの世界的音楽プロデューサー、ジョン・ケアードを口説き、彼のスタッフとともに、この全くの素人である子供たちに踊りと歌を教えてくれるよう頼みこむ。

 

彼らが何度かウガンダに教えに行くにつれ、子供たちの歌と踊りが徐々に完成していく。おそらく天性のリズム感の良さが、きちんとした指導の元、才能が花開いていったのだろう。

 

一方、2011年3月11日、東北大震災が起こり、ここにも計らずも多くの孤児が生まれた。玉井さんはすぐに東北での支援を開始。彼らにも歌と和太鼓を教えるようになる。そして、このウガンダと東北というふたつの点がつながり、ウガンダの孤児たちと東北の孤児たちを合わせてニューヨークのブロードウェイに連れて行こうということになったのだ。

 

その過程で、それぞれの遺児のストーリーが挟み込まれる。

 

それぞれが切磋琢磨し、練習をし、ついにブロードウェイの舞台に上がる子供たち。そして巻き起こるスタンディング・オヴェーション。

 

ウガンダ、東北、ニューヨークの点が線となった瞬間、大きな感動を巻き起こす。

 

玉井さんから、こういうのをやりたいから記録を撮ってくれと言われた篠田さんがこれに本格的にかかわりだしたのが、2014年から。篠田さんはこれに本気でかかるために勤めていた会社(TBS)を辞める決意をし、およそ3年余で完成を見た。

 

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劇場公開。

 

ウガンダ4回、東北7回、ニューヨーク1回の現地ロケをし、計300時間の映像素材を90分にまとめあげた作品がこれだ。玉井さんはこれについて「これは篠田(監督)の最高傑作だ!」と太鼓判を押す。

 

この映画をたとえばテレビや全国各地で上映することによってあしなが育英会の運動の宣伝になり、より運動が大きくなっていく事を目指している。

 

第一段階では近日中に劇場公開を目指し、そこからメディアに注目してもらい、この運動を広げていこうと考えている。

 

劇場公開後は、上映を希望する方たちにどんどん自主上映会の形でも広げていこうという。

 

本ソウル・サーチン・ブログでもこのプロジェクトについては引き続き応援、注目していくので、最新情報がでればご紹介していきます。

 

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フェイスブック・ページ

https://www.facebook.com/daddylonglegsmovie/

 

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教育。

 

僕はこの映画が示す、どこの子供たちにも高等教育を与えるということが本当に重要だと思う。そうした教育が貧困をなくし、ひいては差別、偏見、そしてそこから生まれる対立、戦争をも防ぐことになる。

 

私事になるが、1974年、ジェームス・ブラウンが2度目の来日を果たしたとき、ミスター・ブラウンは盛んに子供たちの教育が大事だ、今の子供たちには正しい教育が必要だと声を大にして言っていた。

 

僕はその時大学生だったが、ミスター・ブラウンの言う意味がよくわからなかった。僕の周りはみな大学に行っている、みなそこそこの教育を受けているから、それこそ大学に行くこと、あるいは高校に行くことなど当たり前だと思っていたからだ。なんでそんな当たり前のことをミスター・ブラウンは口を酸っぱくして言うのだろうと思ったのだ。

 

しかし、高校や大学に進める子供は、世界規模で見ればひじょうに少数派だということを何年も経ってから知る。それこそ、その後世界のことをCNNやその他のメディアなどで見聞きするようになり、小学校さえ通えない子供たちが世界にはたくさんいることを知るわけだ。そのとき、ミスター・ブラウンが言った何よりも教育が必要だ、と力説していた真の意味がわかった気がした。

 

そして、本企画を立てた玉井さんは、これから50年でアフリカの人口が世界で一番多くなり、欧米、日本などは(人口が)右肩下がりで減っていくと指摘。そこで、今、最貧国とされている49の国から一人ずつやる気のある子供たちを選び、欧米日本などで高等教育を無償で提供し、その後彼らが母国に戻り、その地をよりよくするリーダーになってほしいという気が遠くなるような計画を立てている。そうしたことは一朝一夕ではできない。それを玉井さんは、100年先を見据えてやっているのだ。それが、玉井さんの壮大な100年構想だった。

 

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100年構想。

 

この日、玉井さんと少しだけ話す機会があった。移動は車いすだが、そのガッツと前に進む力、プロジェクトを前進させる力のオーラは本当にすごかった。行動力と気構えと、すべてガチなんだなと感銘した。この100年構想のコンセプトには本当に感動した。

 

そして僕も自分なりの100年構想をこの年の初めに考えてみようと思った。たぶん僕と言う人間は玉井さんのようなことはもうできないだろう。ただ自分がいる本当に狭く小さなフィールドで100年構想を持とうと思った。

 

これまでにもそれに近い感じの思いはおぼろげにあったが、玉井さんと会ってかなり明確になった。

 

例えば、自分が書く原稿は10年後に有効か、50年後に読まれて恥ずかしくないか。そして100年後に考古学者が僕の文献を漁ることになっているか。できれば、そうしたものを目指していこうと思った。幸い僕の書く物はすでに40年や30年前のものでも、そこそこ読める。例えば、そのためには、何十年後かに読まれるかもしれないので、西暦は必ず4桁で書く。76年、05年などとは略さない。100年単位で考えると、1976年なのか、1876年なのか、2076年なのかわからなくなるからだ。そして、原稿を書いた日付けはかならず入れる。その情報がどの時点でのものかを明確にするためだ。

 

もちろん、個人の感想や思いつきなどをそこに入れ込まず、アーティスト本人の言葉などを徹底的に調べて、事実に基づいて絞り込んで書く。たぶんこれをさらに発展させて100年後にも読まれる原稿を書こう。それがこの正月の最大の宣言である。

 

とはいうものの、本当は10年構想でさえもまだ難しいんだが…。それに、こんな些細などうでもいいようなことで100年構想なんておこがましいか。スケールが小さいような気もするなあ。まあ、タイトルは「僕の小さな100年構想」といったところかな。

 

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あしながおじさん (新潮文庫)

ジーン ウェブスター

https://goo.gl/LbsERg

 

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あしなが育英会

http://www.ashinaga.org/

 

教育こそ百年の計

http://www.ashinaga.org/hyaku-nen/2015/02/03/

 

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