◎小沼ようすけの80分間世界一周の旅~白いキャンヴァスに反射する様々な色彩
【Onuma Yosuke : Around The World In 80 Minutes】
80分間世界一周。
ギタリスト、小沼ようすけが2年ほど前から準備してきたプロジェクトがゴールを切った。彼によると2年ほど前に、アルバムを作って、あちこちでツアーして、最後にこの東京のブルーノートでツアーを締めるライヴをやりたい、と考えたことがこの日実現したという。そしてこの日は超満員立ち見もでる人気ぶり。
そして、彼がブルーノートのステージに自身名義で立つのは2010年10月以来6年半ぶりのこと。2010年だから、7年ぶりだ。その前回のライヴ評がこちら。
小沼ようすけライヴ:「グオッカ」(グアドループのリズム)とのケミストリー
2010年10月14日(木)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10675898323.html
彼が今回作ったアルバムは、カリブに浮かぶグアドロープというフランスの海外県にある「グオッカ」(gwo ka)というリズムを取り入れた前作『ジャム・カ』の第2弾、『ジャム・カ・ドゥー』(ドゥーは2の意味)だ。これの経緯については、上記2010年のライヴ評を参照されたい。もちろん前作で取り入れた「グオッカ」は今回もしっかり土台を支える。
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純白。
それにしても久しぶりにイマジネーションの広がるライヴだった。
最初ステージに上がったとき、小沼ようすけは真っ白だった。だが、それが今回のミュージシャンたち(うち3人は前回と同じ、ピアノだけ違う)と交わっていくうちに、どんどんと色を反射していく。青、コバルト・ブルー、銀色、緑…。曲によって万華鏡のように色がどんどんと変わる。それはたぶん小沼ようすけ本人がひじょうに純粋で無垢な純白だからどんな色をも反射させるのだろう。
秋田出身の小沼が東京・湘南に居を構え、さらにパリでグアドロープやマルティニーク出身のミュージシャンと知り合い、グオッカという音楽、リズムと出会い、それを自身の音楽として消化し昇華、パリでライヴをやり、日本ツアーをして、最終日にブルーノートに戻ってくる。
土着的なグオッカがパリの街で熟成すると少し洗練される。そしてそれを小沼がやるとさらに湘南色なのか何かが加わる。
90分弱、サウンドはほぼ常夏の真っ青な空を描いていたが、小沼は時折そこに雪を降らせた。それは生まれ故郷秋田の雪なのかもしれない。こんなことはなかなかできない。
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反射板。
ピアノ、キーボードのグレゴリー・プリヴァは初めて見たがひじょうにノックアウトさせられた。一言で言えば、彼のピアノには僕が敬愛する深町純的なものを感じてしまったのだ。今までどんなピアニストを聴いても深町純的なものを感じたことはなかったが、それを感じたことに自分自身驚いている。この辺りはもう少し精査してみる。(とりあえず、ブルーノートで売ってた2枚のCDを入手。本人によれば4枚アルバムをだしている、という。下記参照)
しかし、この音楽、このミュージシャン、バンドが彼に完璧にはまっている。本当によくこの音楽を見つけたね、としか言いようがない。この出会いは、音楽の神様が起こした奇跡なんだろう。
小沼ようすけは色が七変化する反射板。それは色だけでなく、様々なカルチャーも反射する。今度、アフリカに旅してほしいなあ。彼がどんなものを吸収し、反射するかぜひ見てみたい、いや、聴いてみたい。
セカンド・セットではなんとフランスのソウルマン、ベン・ロンクル・ソウルが飛び入りして「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を歌ったという。
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余談。
ちなみに、グアドロープという地名は僕は30年以上前にとある音楽プロデューサーの名前から知った。まったくどこにある国なのかもわからず調べたら、カリブに浮かぶフランスの海外県だった。そのプロデューサーの名前は、ジャック・フレッド・ぺトラス。そう、イタリア人のマウロ・マラヴァシと組んでチェンジやBBQバンドをてがけたプロデューサーだ。アーノウとオリヴィエにジャック・フレッド・ぺトラスのことは知っているかと尋ねたら、知らなかった。まあ、そりゃそうだ。それらのディスコヒットが誕生したころ(1980年代初期)、彼らはまだ生まれていなかった。
また、ベース奏者レジ―・ワシントンは元々ニューヨーク出身だが、現在はベルギー・ブルッセルに住んでいるという。彼のシュアな職人的なベースも安定していた。
グアドロープの音楽を東洋、日本の音楽家がパリでみつけてそれを日本をはじめ世界に紹介する。なんとなく世界はどこかでつながっているなあ、ということを感じた一夜だった。
■小沼ようすけCD
ジャム・カ Jam Ka
ジャム・カ・ドゥー Jam Ka Deux
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■小沼ようすけ、今回のライヴツアーについて語る (2017年4月21日) ぴあ関西版ウエッブ
http://kansai.pia.co.jp/interview/music/2017-04/onumayosuke-jamkadeux.html
世界各地の音楽をいろいろ研究していて、その中から「グオッカ」がピンときたというのはとてもおもしろい。また次作はいよいよグアドロープでの録音になるのだろうか。
左・吉岡、右・小沼ようすけ
左から吉岡、グレゴリー・プリヴァ、オリヴィエ・ジュースト、アーノウ・ドルメン
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■グレゴリー・プリヴァCD
4作目(最新作)FAMILY TREE
GREGORY PRIVAT TRIO
グレゴリー・プリヴァット・トリオ
(2016/10/14)
3作目 Luminescence[日本語解説付き]
Gregory Privat
Jazz Family / AGATE (2015-02-12)
2作目 Tales of Cyparis
Privat Rhodes Codjia Slavik Dolmen Troupe Tenorio
Plus Loin Music (2013-09-24)
1作目Ki Kote
Gregory Privat
Gaya Label (2015-10-13)
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■レジー・ワシントン
フリードム
Lot of Love Live!
Reggie Washington
CD Baby (2012-07-26)
Collaborations
KARZ MONTE' MUSIC (2016-02-14)
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■セットリスト 小沼ようすけ @ブルーノート東京 (2017年4月29日土曜)
Show started 17:01
00. Opening
01. Moai’s Tihai
02. Flowing
03. The Elements
04. Flyway
05. Medley : Beyond the Sea - Le Bonheur (Yosuke + Gregory)
06. Duo Ka [With Ka] (Olivier + Yosuke)
07. (Ka Solo) (Olivier + Arnaud)
08. Ti’ Punch
Enc. Songe Mwen (Remember Me) (Arnaud on vocal)
Show ended 18:29
■メンバー
Yosuke Onuma(g) 小沼ようすけ(ギター)
Reggie Washington(b) レジー・ワシントン(ベース)
Gregory Privat(p, fender rhodes) グレゴリー・プリヴァ(ピアノ、フェンダーローズ)
Arnaud Dolmen(Ka, ds) アーノウ・ドルメン(カホーン、ドラムス)
Olivier Juste(Ka) オリヴィエ・ジュスト(カホーン)
(2017年4月29日・土曜、小沼ようすけライヴ、ブルーノート東京)
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