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○「忖度(そんたく)」今年の流行語大賞候補

 

【SONTAKU Will Be Nomination For Buzzwords Of The Year Contest】

 

忖度。

 

この数週間「忖度(そんたく)」ほど世間を賑わしている言葉はない。例の森友学園騒動の中でさかんにでてきたワードだ。

 

2017年3月23日夕方、渦中の人籠池氏が証人喚問のあとを受け、外国特派員協会で外人記者向けに会見を行った。

 

ここでの記者会見は基本的にはスピーカーが日本人の場合も外国人の場合も通訳がつく。今回のように日本人の場合、質疑応答は日本語がしゃべれる人は日本語で尋ね、その質問を英訳し、日本語で答え、さらにその答えを英語にする。

 

証人喚問ではわけのわからない質問がとびでたりしていたが、さすがに外国人記者はずばりと質問する。そんな中で、籠池氏が「忖度」という言葉を答えの中で使ったところ、その訳をめぐって、通訳陣がちょっと戸惑っていた。最初通訳していた人が「read between line」(行間を読む)」と訳した。するとその周囲にいる、おそらく日本語と英語を理解する人が、「忖度」の訳が違う、あるいは、訳し切っていないと思ったのだろう。2-3人(その場面は残念ながら映っていなかった。声だけが小さく聴こえる感じ)で喧々諤々やっていたのだが、忖度について説明した。

 

まあ、確かに、行間を読む、でも間違いではないだろうが、日本語の「忖度」は、もっと強いというか広いニュアンスを含んでいると思う。

 

そこで「忖度」を辞書で調べてみた。

 

Weblio では、

 

忖度する

guess

【形式ばった表現】 surmise

【形式ばった表現】 conjecture.

 

とある。

 

そのconjecture を同じ辞書で引くと、

 

1推量,推測,憶測.

a mere conjecture 単なる憶測.

2〈…という〉推測した意見,推論 〈that〉.

 

という。

 

ちょっと違うなあ。

 

ここでの「忖度」のニュアンスは、「相手が考えるであろうことを先回りして考えて、それを(一歩踏み込んで)行動する」といったところではないか。

 

「Read between the lines」だと、文字通り「行間を読む」「言外の意味を読み取る」で、その程度なら、役人は行動を起こさない。行間を読んで、行動を起こすあたりまでが、忖度。すごい日本語ですね。

 

しかも、もっとおもしろかったのが、籠池氏が、「逆忖度(ぎゃく・そんたく)」という言葉を使ったとき。僕は思わず画面に向かって「リヴァース・ソンタクか」とつっこんでしまったが、通訳の人が、まさに「リヴァース・ソンタク Reverse Sontaku」と訳したので面食らった。Sushi, Sukiyaki, Sumoと並んで、Sontakuが日本語から英語の単語へ出世した瞬間を垣間見た思いだった。しかし、このイディオム、外国人にわからせるのは一苦労だろうなあ。

 

(追記)

■このシーンについてのハフィントン・ポスト記事

http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/23/moritomo-sontaku-in-english_n_15572790.html

(この記事は、2017年3月24日、14時半本ブログへ追記)

 

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