◎バート・バカラック~「世界への扉」を開く珠玉の名曲の連続 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎バート・バカラック~「世界への扉」を開く珠玉の名曲の連続

【Burt Bacharach: The Legend Of The Legend Still Talks About Current Issues】

現役。

2012年9月の東京ジャズ以来の「レジェンド・オブ・レジェンド」(伝説中の伝説)、バート・バカラックのコンサート。なんといっても、バンドのほかに30人近いストリングス・オーケストラを従えた超豪華でぜいたくなひと時。1曲目からずっと観客は座って、真剣に音楽に耳を傾ける由緒正しいコンサート。バカラックはこのコンサート会場(NHKホール)を「シアターTheater」と言った。そう、まさにシアター(劇場)での立派な格調高いコンサートだった。

1960年頃から数えてもゆうに50年、半世紀もアメリカの音楽シーンの最前線で活躍しているアメリカを代表する作曲家だ。短めに次々とヒット曲をメドレーにしてたたみかけられては本当にたまらない。曲に染み付いた個人的な思い出も脳裏にフラッシュバックする。

メインのシンガー3人がほとんどを歌うが、時にバカラック本人がピアノを弾きながら歌う。

圧巻だったのは、「ワイヴス&ラヴァーズ」から「アルフィー」、さらに「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」と一気にメドレーにして歌うところ。ここでピアノを弾きながらバカラックが頼りなげに歌うのだが、それが実に個性的でやられる。お世辞にもうまいとは言えない歌なのに、50年以上のこの曲の歴史、そして、バカラックの85歳という年輪の積み重ねが「枯れた味わい」となって会場を覆いつくす。この日は「アルフィー」のところで二度ほど咳き込んでしまったが、それも含めて「がんばれ」と声をかけたくなってしまった。

この日嬉しかったのは、下記セットリストで20の「オン・マイ・オウン」。パティー・ラベルの大ヒットだが、そうか、これもバカラックだったか、と改めて感心。本当に多くのヒットがありすぎだ。

扉。

そして、この日のサプライズは当初の予定になかったアンコールの1曲目で歌われた「ビー・アウェア」という曲。これは、バカラック研究家の坂口さんによると、ディオンヌ・ワーウィックの1972年にリリースされたワーナー移籍第一弾アルバム『ディオンヌ』に収録されている曲。バカラックは、「この曲は今日初めてみなさんの前で披露します。この曲のメッセージをみなさんに聞いてもらいたいと思ったので」と言って始めた。

当初、これは何かの新曲かと思ったが、ライヴ後にバカラック本人にピーター・バラカンさんと一緒に訪ねて、聞いたところ、前日(4月9日)ペンシルヴェニア州の高校で起こった殺傷事件の被害者にトリビュートするつもりで歌った、ということだった。また、バカラック自身、この曲を歌うにあたってこの冒頭のコメントを通訳して欲しいと言っていたそうだが、急なことだったので通訳の手配がつかなかったそうだ。

この日歌われた多くの曲はスタンダードとなった傑作ばかりだが、こうした歌をこのニュースのタイミングで歌うところはまさに、今日現在の世界とつながっている、過去・現在・未来をつなぐ現役アーティストの面目躍如だ。

音楽や映画は、僕たちの知らない世界を見せてくれる「世界への扉」だ。そしてこの「ビー・アウェア」を歌ったことで、バカラックは僕たちにもうひとつの「世界への扉」を開いて見せた。そしてスタンディング・オヴェーションが長く続いた。

Be Aware
(written by Burt Bacharach / Hal David)

When the sun is warm where you are
And its comfortable and safe where you are
Well, its not exactly that way
All over

And somewhere in the world
Someone is cold,
Be aware!
And while you’re feeling young
Someone is old,
Be aware!

And while your stomachs full
Somewhere in this world
Someone is hungry
When there is so much
Should anyone be hungry?

When theres laughter all around me
And my family and friends surround me
If I seem to be forgetful,
Remind me

That somewhere in the world
People are weak,
Be aware!
And while you speak your mind
Others can’t speak,
Be aware!

And while your children sleep
Somewhere in this world
A child is homeless
When there is so much
Should any child be homeless?

Oh, no, not even one child,
Be aware!



「ビー・アゥエア」(気づこう)は、前日のペンシルヴェニア州の高校での殺傷事件に関連して歌われた。左=ピーター・バラカンさん、バート・バカラック、吉岡=右

■ ライヴの余韻を味わうライヴ・アルバム。セットリストはこのアルバムに準じています

ライヴ・アット・ザ・シドニー・オペラ・ハウス
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■ コンサート情報

2014年4月16日(水)NHK大阪ホール S席10,260円

2014年4月18日(金)京都コンサートホール S席12,960円

問い合わせ:キョードーインフォメーション06-7732-888 (大阪・京都のみ)
企画制作:プロマックス www.promax.co.jp
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003

2014年4月12日(土)、14日(月)ビルボードライブ東京 自由席24,000円 1日2セット入れ替え制・各回70分。オーケストラははいりません
http://www.billboard-live.com/

■ 過去関連記事

2012年09月12日(水)
東京ジャズ(パート3)~人生のサウンドトラックになるバカラック・メロディー
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11351703450.html
(前回ライヴ評)

バート・バカラック・コンサート
2008年02月17日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10073259727.html
前々回ライヴ評。

作詞家ハル・デイヴィッド死去~アメリカポピュラー音楽史に金字塔残す
2012年09月04日(火)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11345304796.html

■メンバー

バート・バカラック / Burt Bacharach(Piano, Conductor)
ジョシー・ジェイムス / Josie James(Vocal)
ジョン・パガノ / John Pagano(Vocal)
ドナ・テイラー / Donna Taylor(Vocal)
デイヴィッド・ジョイス / David Joyce(Keyboards)
ビル・カントス / Bill Cantos(Keyboards)
マーリース・マルティネス / Marlyse Martinez(Violin)
デニス・ウィルソン / Dennis Wilson(Woodwinds)
トム・エレン / Tom Ehlen(Trumpet)
デイヴィッド・コイ / David Coy(Bass, Gear Coordinater)
ジョン・フェラノ / John Ferraro(Drums)

東京ストリングス(約30名)

■ セットリスト
Setlist : April 10, 2014 @ NHK Hall

musicians seated 19:11
show started 19:15
01. Theme : What The World Needs Is Love
02. Medley 1: [2] to [8] Don’t Make Me Over
03. Walk On By
04. This Guy’s In Love With You
05. I Say A Little Prayer
06. Trains & Boats & Planes
07. Wishin’ & Hopin’
08. (There’s) Always Something There To Remind Me
09. Medley 2: [9] to [13] One Less Bell To Answer
10. I’ll Never Fall In Love Again
11. Only Love Can Break A Heart
12. Do You Know The Way To San Jose
13. Anyone Who Had A Heart
14. I Just Don’t Know What To Do With Myself
15. Waiting For Charlie (To Come Home)
16. My Little Red Book
17. Baby It’s You
18. A Message To Michael
19. Make It Easy On Yourself
20. On My Own
21. Close To You
22. Movie Medley: [22]-[32]Look Of Love
23. Arthur’s Theme
24. What’s New Pussy Cat
25. The World Is Circle
26. April Fools
27. Raindrops Keep Fallin’ On My Head
28. The Man Who Shot Liberty Valance
29. Making Love
30. Wives & Lovers
31. Alfie
32. A House Is Not A Home
Encore 1
33. Be Aware [Dionne Warwick]
34. Some Lovers from Hush
35. Any Day Now
Encore 2
36 Raindrops Keep Fallin’ On My Head
show ended 20:54

(2014年4月10日木曜、NHKホール、バート・バカラック・コンサート)
ENT>MUSIC>LIVE>Bacharach, Burt

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