◎サナンダ・マイトレヤ(元テレンス・トレント・ダービー)初ライヴ~ロックン・ソウル・マンとして | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ サナンダ・マイトレヤ(元テレンス・トレント・ダービー)初ライヴ~ロックン・ソウル・マンとしての矜持を見せつけて

【Sananda Maitreya’s First Live In Japan】

初。

1987年、テレンス・トレント・ダービーの名前でデビューし世界的なヒットを放った彼が、ある日突然名前をサナンダ・マイトレヤと変え、それまでの音楽にきっぱりと別れを告げ、まったくの新人として活動を始めた。2001年のことだ。

テレンス時代の来日公演は1993年12月、1995年5月、また来日としては2001年サナンダになってプロモーション来日があり、12年ぶり。初来日時1993年には武道館、大阪フェスティヴァル・ホールなど名古屋、福岡、仙台も回った。ライヴとしては18年ぶり、サナンダとしてのライヴはもちろん初めてだ。(ああ、ややこしい(笑))

オンステージは3人。サナンダ(ギターとピアノ、ヴォーカル)、ドラムス、ベースだけだ。基本的には3人のパワーロック・バンドでヴォーカルが異様にソウルフルという感じだ。僕はサナンダのヴォーカルにサム・クック的なものを感じるが、さまざまなものがミックスしている。何しろこの声が出てくると、それだけにノックダウンさせられる。声そのものがソウルだ。

かつて武道館で見たときは、バンドが比較的なよなよしていた感じをもったが、今回のは引き締まったバンドという印象で、サナンダ本人が一ミュージシャン、一バンドマンという様相を呈していて驚いた。ボブ・マーリー、ジョン・レノン、モハメドアリが大好きという超反骨精神の彼は現在メジャーを離れ、インディで孤軍奮闘。その芯のぶれないミュージシャンとしての矜持を3人の音から感じた。ギターを弾きながらロックっぽい音を出したりするところなどちょっとプリンスをも思わせた。

サム・クック的なヴォーカルは、彼によると「マエストロ・サム・クックは、マエストロ・ロッド・スチュワートに教わった。彼のレコードやフェイセスのレコードから教えてもらった」という。サナンダは過去のレジェンドに対して「ミスター」ではなく、「マエストロ」とつける。

サナンダとしての最新作『リターン・トゥ・ズーアサロン』が出たばかりでここからの曲が多い。会場でCD(パッケージはDVDのケースと同じサイズ)を売っていたが、3月からアマゾンでフル・アルバムが1500円で買える。

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たぶんチャールズ・ブコウスキーの言葉を引用したのだと思う。サナンダは言った。「チャールズ・ブコウスキーがかつてこんなことを言っていた。自分が好きなもの(愛するもの)を探せ。それに溺れろ」 

乱暴に言うと「ブラック・ロック」のトリオだが、実際は「ブラック・ロック・アンド・モア・・・ウィズ・ソウル」という雰囲気。

ドラムスのニック・スティックスは、バーナード・パーディーからJBズのドラマー、ベニー・ベンジャミンなど黒人のドラマーをリスペクト。ベースのエネアもモータウンのジェームス・ジェマーソン、スタックスのドナルド・ダックダンなど、王道のミュージシャンたちを好んでいる。2人ともイタリア人だが、ソウル、ファンクをよく研究していて、実際のプレイもファンクに根付いている。

サナンダの声は力強く、実に破壊力がある。

テレンス時代の曲はすべて封印している。彼によれば「TTDは、死んだ」そうだ。僕もほとんど知らない曲ばかりだったが、演奏と歌に圧倒され楽しめた。若干、前日にツイートしたサナンダのサイトにある曲の動画を見ていて、覚えていた曲もあった。

現在は2002年からイタリア・ミラノに住んでおり、奥さんがイタリア人。彼女との間に二人の子供がいる。

パワー・ロック・ソウル・トリオと思って聴くと、実にソウルフル。

おもしろいのがほぼ全曲、歌う歌詞がバックのスクリーンにスライドで映されること。仮に聞き取れなくても、文字で少しわかる手助けになる。曲名を言うのはスライドの担当に歌詞を用意させなければならないため。言わないときは、たぶん、イントロなどで曲名を判断しているのだろう。

基本、ギターを弾きながら歌うが、途中で3曲程度、ピアノで弾き語りをした。

サナンダ・マイトレヤの発言は実におもしろい。サナンダ語録いくつか。

「テレンス(TTD)から名前をサナンダ・マイトレヤに突然変えた。プリンスみたいですね」というと、「プリンスとの違いがある。彼の(シンボルマーク)は発音できないが、俺のはできるよ」

「ポエット(詩、歌詞)は、社会の下の層から生まれるんだ。コーポレーション(会社組織)からは絶対に生まれてこない。音楽のマーケティングなんかファックだ。ジェームス・ブラウンのマーケットがあったか? ジミ・ヘンドリックスのマーケットがあったか?」 

「俺のヒーローはたくさんいる。マスター・モハメド・アリ、マスター・ジミ・ヘンドリックス、マスター・サム・クック、マスター・ジョン・レノン、マスター・ジェームス・ブラウン・・・。」

けっこう曲がいいので、初めて聴く曲でもすぐに溶け込める。そして、なにより驚いたのがサナンダのファンへのサーヴィスっぷり。ライヴ後、サイン会をしたのだが、終わったのは2時すぎだ。ひとりひとりに丁寧に話をし、サインをし、写真を撮るのでそれほどの時間がかかったのだ。これには本当に頭が下がる。

そのキャラクターなどからすっかりファンになってしまった。再来日希望。

■ ここで今回のライヴで歌った曲が何曲か聞けます

http://www.youtube.com/watch?v=E-x7L-Xn2CI&list=SP49F88F1042A46652




■ メンバー

SANANDA MAITREYA & The Nudge Nudge

Sananda Maitreya(vo,g,key,p) サナンダ・マイトレヤ(ヴォーカル、ギター、キーボード、ピアノ)
Enea 'Il Conte' Bardi(b) エネア “イル・コンテ” バルディ(ベース)
Nik 'The Sticks' Taccori(ds,back vo) ニック “ザ・スティックス” タッコーリ(ドラムス、バック・ヴォーカル)

■ セットリスト
Setlist : Sananda Maitreya @ Bluenote Tokyo, March 21, 2013

show started 21:38
01. I’m Your Daddy
02. Duchess
03. I Saw Her
04. The Ballad Of LeBron & Kobe
05. Christine
06. Albuquerque
07. Stagger Lee - Part 1
08. Stagger Lee - Part 2
09. Ornella Or Nothing
10. Camel
11. Save Me
11. If All I’ve Got
12. O Divina
13. Return To Zooathalon
14. Dancing With Mr. Nostalgia
15. If I Go Away
16. Free To Be
17. Kangaloo
Enc. O Divina
Enc. Just Go Easy
Show ended 23:16

(2013年3月21日木曜、東京ブルーノート、サナンダ・マイトレヤ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Maitreya, Sananda

■ サナンダ最新作 『リターン・トゥ・ズーアサロン』(アマゾンでは、MP3ヴァージョンが入手可能。フィジカルCDはライヴ会場とサナンダのサイトの通販のみでの販売)1500円

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