第二十三話、サドル探しの旅
FELT F75 が納車された直後、ショップ近くの緑地公園で試乗してみた。
少し乗ると、お尻に違和感。
どうもサドルとお尻が合っていない。
ポジション出しを煮詰めないとイカンな~。
色々いじったのだが、結局その日は満足のいく結果が出ず撤退。
翌日からサドルとポジション出しについて色々と調べまくった。
主なポジション変更点、
・シートポスト(ピラー)の高さ
サドル交換・チルト角度調整のたびに微調整が必要。最も頻繁に調整するトコ。
初心者は低めだが、経験を積み前傾が深まると徐々に高くなっていく。
プロ並に高くする人がいるが、回転スキルが身についてないと、かえって逆効果。
(足が届かないくらい高い位置での回転スキルが必要)
ノンプロの場合、自分のペダリングスキルにマッチした高さに微調整した方がよい。
シートポストの目盛りで位置がわかる。
・サドルの前後位置
尻が安定する前後位置に合わせること。後ろ過ぎても前過ぎてもペダリングの妨げになる。
ペダリングしやすい範囲で調整すること。
またサドルポジションが変わると、ハンドルまでの距離が変化するので、
場合によってはステム長を変更しなければならない。
赤枠の目盛りで前後位置がわかる。
・サドルのチルト角度
一般論では前下がりは論外、基本は水平。
ただしサドルと乗り手の相性・レース用途以外の場合、前下がりの方が良いこともあるので絶対ではない。
赤枠の金具を弛めるとチルト角度を変えられる。
サドル前後位置もこの金具を弛めて変える。
私の場合、すでにシートポストも伸びきって前傾姿勢なので、ロードのハンドルも低いとは思わない。
ケツ筋だって、そこそこ鍛えられている。
走行距離もクロスバイクで 7000km超。
一日で 160km 走ったこともあるし、休日ツーリングで100km級のツーリングは余裕でこなせるようになった。
レーパンを装着してる限り尻が疲れることはあっても、耐えられないほどではない。
じゃあ、何が悪いのか? 犯人はすでにわかっている。
サドル
ええ、そりゃもう三日間かけて色々試しましたよ。
シートポストの高さを変えてみたり、
サドルの前後位置を一番前から一番後ろまで全部試したり、
サドルのチルト角度を前倒し・後ろ倒しに変えてみたり、
結局、全部ダメ。
一番の欠点は、もがけない。
40km以出そうとすると、痛みがピークに達してそれ以上出せないのだ。
インナータイプのレーパンも試したけど無理。レーパンではごまかしきれない。
明らかに骨とサドルがケンカしてる。
イヤ、なんとか乗れるポジションがひとつだけあるのだが、これは論外だった。
サドルを一番後方までズラして、前方上向きに取り付けてみた。
なんとか尻は痛くないが、極端な後ろ乗りでペダルまで遠い。
気合入れてケイデンスすると太ももとふくらはぎの裏側が痛む。
まともにヒルクライムできないだろう。
明らかにサドルのためにまともにペダリングできないポジションまで移動している。
サドルはペダリングを妨げない範囲で位置調整するのが基本だから、これではダメ。
こりゃ本末転倒だ。
痛みの原因もだんだんわかってきた。
恥骨がサドルの真ん中に当たって痛みだし、10kmどころか500m走っただけで違和感が出てくる。
いくらなんでも相性悪すぎだろう。
コイツで100km走る気にはなれない。
この赤枠の部分が恥骨に当たる。
実はこの部分より右側中央部がヘコんでいるのだが、そのヘコミ頂上が恥骨をダイレクトに圧迫してくれる。
FELT1.3 サドルそのものは薄いクッションが入っているので、尻の形に合う人なら問題ないと思う。
サドルについての前提条件
仮にベストフィットのサドルでも、別人には合わない可能性がある。
ぶっちゃけた話、プロショップでも合うのか合わないのか保証できないのが実状。
ママチャリ型ドテ座りでは足の筋肉に負担をかけ膝を壊すこともあり得る。角度やサドル形状に気をつけないと大事なところが痺れたり、尻が痛くなるので、乗り手の尻や骨盤の形とサドルとの相性を試しながら探さねばならない。
自分に合ったサドルを探すのはなかなか難しく、ゆえに
サドル探しの旅
と呼ばれている。
3・4回変更することも珍しくない。人によっては10回以上交換することもあるらしい。
無難なところでは、コンフォート系のロングヒット商品はフィットしやすい。
スポルティーフ・ランドナー・ツーリング車では使い込むうちに尻の形に合ってくる皮サドルを使う人が多い。
レーシー系サドルは何個も試さないと、ジャストフィットの一品はなかなか見つからない。
仕方なく、別のサドルを探すことにした。
うーん、母を訪ねて三千里じゃあるまいし、ジェノヴァからブエノスアイレスまで逝きますか?
(ワシ、この旅から帰ってこれるかな~)
さあ出発だ!
今、陽が昇るっ
希望の光、両手につかみ~
ポンチョに夜明けの風はらませて~♪
どのサドルがいいのか?
統合作戦本部長にして幕僚長も兼務する私としては、事前に情報収集しておかねばなるまい。
さあっ、物欲、物欲!
(なぜか嬉しそう、に)
ちなみに女性ライダーの場合、男性とは骨盤や尻の形が違う上、女性器が直接サドルに押しつけられることもあるので激しい痛みを伴うことがあるらしい。
女性用サドルは、さらに選択肢が限られるので難しいそうだ。
あるHPで見てしまったのだが――
キチンとチョーセーしないと、時速20マイルでエクスタシーを感じ昇天してしまうこともあるそうです。
実際に高速走行中に失神して、落車したことにも気付かない女性ライダーがいたらしい。
(何ゆえ、とは言うまい。あえて……)
しかし、大阪人のサガなのか、その話を見た瞬間、脊椎反射でツッコんでしまった。
「それってある意味――
イケてるサドルなのでわっ!」
(別の意味で、ジャストフィットしちゃったのね……)
うあ、下ネタだよ~。サイテーの芸人だな……っていつから芸人になってん!
