眼科での検査後の診察だ。
診察室が並ぶ一番奥の部屋だ。
病院とは思えない、ホテルのような廊下を通り診察室前の椅子に座って待った。
自分の名前が呼ばれ、妻と一緒に入った。

病院の外観や受付、待合とは違い、少し物が多くスッキリとはしていない診察室内だ。
先生は30代か。
とても若い先生だ。
外見はNHKの連ドラで寅と翼に出演していたミチオにそっくりだ。
ミチオのように笑顔はなく、すんっとしている。
顔はやや上を向き、目は表情なく下を見下げる感じだ。
ほかに2人の看護士がついている。
どんな診察になるのか。

紹介状に目を通し、脳梗塞を起こし視野の一部が欠け、四分盲という現在の状態に触れ、大変で辛かったでしょう、と言葉をかけてくれた。
しかし、目や表情は、すんっとしたまま、目線を合わせない。
じゃ壁のあの光を見て、と自分の顔にペンライトを当てながら自分を診た。
ほんの数分のやり取りだ。
先生は、これは眼ではなく脳なですね、ここは眼の病気で見え辛くなった視力や視野を訓練して生活ができるようにするところなんで。
これまでのトーンと変化なく諭すように話した。
自分は改めて、眼ではなく脳なのだと認識した。
分かっていた。
分かっていたが、何か視野を改善する器具等があるものなのかを期待していただけだ。
でも、よりこれで脳だという事を再認識できた。
妻と一緒に静かに診察室を出た。

しばらく検査室の前で待つよう言われ待っていると、スタッフさんが先程の視野検査結果を持ってきてくれた。
それは見えているかのように反応してしまったもので、正確なものではないと分かっていた。
スタッフさんは、結構見えてますよ、と優しく明るく伝えてくれた。
そうでしょう、でも本当は違うはずで、実際はこんなに見えてないよ、と心の中で訴えた。
言ってもしょうがない。
また次の検査の機会に。
自分は何にか重い症状を期待しているような妙な気持ちだった。

こうして眼科に行ってみたが、何も得られなかった。
得たのは現実だ。

今なら分かる。
脳神経内科外科の主治医は分かっていたのだと。
眼ではなく脳だと言われる事を。
患者自身が納得する診断を得るまでは、その症状に終わりはないのだと。

後日、診察結果を病院に郵送するとの事。