政治資金規正法の改正案づくりで自公が条文をめぐって対立し、自民党が単独で改正案を提出。自公が連立を組んで以降、重要法案では初めての事態だ。

 公明党の意思をはっきり示したのが山口那津男・代表の発言だ。首相も出席した5月13日の政府与党連絡会議で政治資金規正法の改正について「野党を含めた協議を急がなければならない」と言い放った。政治ジャーナリスト・泉宏氏が指摘する。

「政府与党の会議で公明党代表が『野党と協議する』と宣言した。自民党との協議からは手を引くという意味ですから、極めて異例の発言です。これまでの自公連立では考えられません」

早く退陣してほしい

 公明党が恐れているのは、支持率ジリ貧の岸田首相の手で解散・総選挙が行なわれることだ。前出の泉氏がこう言う。

「今、解散総選挙になれば、公明党も自民党の裏金問題批判の逆風に巻き込まれて議席を大きく減らす可能性が高い。公明党は次の総選挙で小選挙区の候補を2人増やすが、次期代表候補と見られているエースの石井啓一・幹事長をはじめ、大阪など小選挙区で軒並み議席を失いかねない。

 公明党が自民党の言いなりに政治資金規正法改正案を成立させれば、岸田首相の解散に弾みをつけてしまう。だからなんとか岸田首相にストップをかけようとしている。できれば総理を辞めてほしいという意識もあるでしょう」

 

公明党はこの間、再三、自民党に警告のサインを送ってきた。山口代表は3月の自民党大会の来賓挨拶で、「連立政権は最大の試練に直面している。連立合意には、『国民の声を聞き、謙虚な姿勢で真摯に政権運営に努める』とあるが、今ほど胸に響くことはない」と自民党に猛省を促し、石井幹事長もBSテレビの番組で総選挙の時期について、「総裁選の期間中は、自民党が非常に注目を浴びる。そこで選ばれた総裁は非常に支持率が高くなる。その後の(今年)秋というのが、一番可能性が高い」と言及した。

 解散総選挙は自民党総裁選で新しい総裁が選ばれた後になるという、岸田退陣を前提にしたと受け取れる発言だ。

 いずれも岸田政権下での解散を牽制する狙いであり、岸田首相と公明党の間で、「解散をめぐる闇の権力闘争」(泉氏)が展開されていた。政治資金規正法改正案をめぐる自公の決裂は、公明党の岸田首相に対する“最後通牒”でもある。

※週刊ポスト2024年6月7・14日号