自民党の裏金事件は聞けば聞くほど疑惑が深まる。衆参両院の政治倫理審査会に出席した安倍派幹部は、異口同音に「秘書が」の一点張り。派閥の政治資金パーティーをめぐるノルマ超過分の還流廃止を安倍元首相が決定したのは覚えているのに、4カ月後の廃止撤回の経緯はそろって記憶喪失。疑惑のド真ん中にいる元会長の森喜朗元首相の関与についても、誰ひとり本人に問いたださない。偽証罪に問われる証人喚問を野党が要求するのは当然だ。秋波を送られる公明党がこれほど存在感を高めている時はない。真価が問われている。

 立憲民主党などの野党4党は、安倍派の事務総長経験者である西村康稔前経産相、松野博一前官房長官、高木毅前党国会対策委員長、下村博文元文科相のほか、座長の塩谷立元文科相と政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で起訴された池田佳隆衆院議員(自民除名)の証人喚問要求で合意。衆院政倫審に出ていない裏金議員45人の出席を求める「申し立て」を目指すことでも一致した。

 もっとも、証人喚問の開催は予算委員会委員の全会一致が慣例で、政倫審は委員の3分の1以上の賛同が必要なため1人足りない。そこで野党は公明党にラブコールを送っているのだが、案の定つれない。

■「下駄の雪」より下劣

 山口代表は政倫審について「国民の納得感は得られていない。ますます不信を強める結果になっている」と批判しているが、19日に立憲の安住淳国対委員長から協力要請を受けた公明の佐藤茂樹国対委員長は「我が党独自として回答しようがない」などとごにょごにょ。与党の一角を占めるとはいえ、主体性のなさをさらけ出した。証人喚問に至っては「非常にハードルが高い」と口合わせ。「下駄の雪」あらため「同じ穴のムジナ」と揶揄されるわけだ。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。

「自公連立政権発足から24年半。公明党自民党のブレーキ役を自任していますが、与党ボケが目に余る。世論を受けてもっともらしいことを言っても結局、自民党におもねってしまう。防衛装備移転三原則の骨抜き合意にしたってそうです。金看板に掲げる『平和の党』の『平和』の定義は一体何なのか。自民党と組む前の野党時代を知っている議員は片手しかおらず、ぐだぐだもいいところ。自民党とそろって下野しない限り、目が覚めないでしょう」

 在野をほぼ知らない点で言えば、公明党の質も安倍チルドレンと大差ないのか。期待するだけムダ──そうは考えたくない。