ドライバーの出勤までに仕分けが終わらず…

クロネコメイトとパート社員の契約終了が昨年6月に発表されて以来、集英社オンラインでは7回(#1#2#3#4#5#6#7)にわたって、ヤマトの現場で働く人びとの不満と混乱ぶりを報じてきた。そして、今年1月末をもって、一部パート社員を除き、予告通り、約2万8000人の非正規社員の契約が終了した。

それから1ヶ月経ち、現場はどうなっているのか。神奈川県内でヤマトのSD(セールスドライバー)として働く正社員の男性は、「(クロネコ)メイトさんが辞めてから、そのしわ寄せが自分たちにきている」と肩を落とす。

「メイトさんの中には、メール便の配達業務だけでなく、『早朝仕分け』を兼任していた人も多かった。だから、今回の“メイト切り”で仕分けをする人がいなくなり、ドライバーが出勤する朝8時になっても、宅急便の仕分けが終わっていない状況が続いているんです。

宅急便は午前指定が多いのに、出勤してから自分たちで荷物の仕分けをしなければならず、かなりのタイムロスになっています」

早朝仕分けとは、朝5時から8時にかけて、その日ドライバーが運ぶ宅急便の荷物を仕分けるパート業務のことだ。時給は1200~1300円ほどで、この業務と掛け持ちでクロネコメイト(個人事業主)としてメール便を配達することで安定収入を得ていた人も少なくなかった。

つまり、早朝に仕分けのパート業務を行い、その後、業務委託としてメール便を配達することで生計を立てている人が多かったのだ。

だが、1月末でメール便配達の業務提携は打ち切られたことによって、現場での仕分け業務がまわらなくなったのだ。都内のセンター(営業所)のSDである正社員男性はこう語る。

「私のセンターに勤めていた5人のメイトさんのうち、半数が早朝仕分けを兼任していた。それがメイトの契約が打ち切られたことにより、『早朝仕分けだけでは大した稼ぎにならない。別のバイトを探す』や『ヤマトへの信用をなくした。もうここでは働きたくない』と、早朝仕分けの仕事も辞めてしまいました。
他センターの同僚たちも同じような理由で『早朝仕分けが足りなくなった』と嘆いていて、朝から自分たちで荷物の仕分けをしなきゃいけない状態です」

クロネコゆうメールもトラブル続出

一方、1月末で廃止された「クロネコDM便」を引き継ぐ形で始まったのが「クロネコゆうメール」。この新サービスでは、ヤマト運輸は集荷だけを行ない、配達は日本郵便が担当することになったが、「あれ(クロネコゆうメール)は現場では批判の嵐です」と話すのは、都内の副都心主管のセンター(営業所)で働くSDの男性だ。

「クロネコゆうメールは、僕らヤマトのドライバーがメール便の集荷を行ない、郵便局が配達することになっていますが、郵便局の仕分けで弾かれるケースが頻発しています。弾かれたメール便は僕らがお客さんの元まで返しに行かなくてはならないので、二度手間なんです」

集英社オンライン編集部にもクロネコゆうメール利用者から数多くの情報提供があり、「これまで問題なく出せていたパンフレットが、なぜか差し戻しになって返ってきた」「クロネコゆうメールになってから配達に時間がかかるようになった。2週間待たされたことも」といった声も届いている。

なぜ、このようなトラブルが相次いでいるのか。前述の副都心主管のセンターのSDはこう説明する。

 

「以前は問題なく配達できていたものでも、一度、戻ってきてしまったら僕らは差出人に戻すしかなく、お客さんによっては『今まで普通に配達できてたじゃん!』と怒り出す人もいる。だからメール便の集荷をやりたがる同僚はほとんどいませんよ」

配達に時間がかかっている理由は何か。男性は続ける。

「以前まではだいたい2~3日で配れていたのに、郵便局のチェックが厳しくなって、仕分けに少なくとも1週間はかかるようになったからでしょう。
差し戻しも多くなっているから、このサービスで配れるものが限られてしまっている状況で……。実際に2月中旬以降、メール便を出すお客さんもめっきり減りました」

 

神奈川でも退職者が続出

また、ドライバーの分業化やセンターの集約化など本社の方針転換によって、都内の一部主管で大量離職が引き起こされていることを集英社オンラインは報じてきた(#4#7)。

しかし、前出の神奈川県のセンターに勤めるSDによると、「退職者が相次いでいるのは都内だけではない」と語る。

「神奈川主管では、去年の退職者数が過去最多でした。その理由として挙げられるのが、上層部からの執拗なコストカット。とにかく主管支店長が『稼働を絞れ』とうるさくて、これまで3人で担当していたエリアを2人で配らされるようになりました。前日の夜配が長引けば、(就業規則により)翌日の出勤時間を遅らせられるんですが、それでも一日の配達量は変わらないため、休憩時間も働き通しで配り続けなくてはならない日も珍しくありません」

 

休憩なしでも、システム上は休憩を取ったことにしないとセンター長から呼び出しを食らってしまうため、この男性も同僚たちも虚偽申告することが日常茶飯事だという。

「上層部が『ちゃんと休憩を取れ』と言ってもそれは表向きで、ドライバーが休憩を取れるような労働環境にしようという動きは一切ありません。結局、誰かが労基(労働基準局)に駆け込まないかぎりなにも変わらないでしょう。

都内の一部主管のように分業制が始まれば、今よりもっとドライバーにシワ寄せがくるのではないでしょうか」

今回報じた、

「早朝仕分けの人手不足により、ドライバーが配達を開始できていない」
「クロネコゆうメールでの差し戻しが頻発している」
「昨年、神奈川主管で過去最多の退職者」
「休憩時間について虚偽の報告をせざるを得ない」

という状況などについて事実かどうか、ヤマト本社に質問状を送ったところ、以下のような回答があった。

 

「いずれのご質問も個別の事案のため、回答は差し控えさせていただきます。なお、一部のクロネコゆうメールにおいて、日本郵便さまへ引き渡しできていない事実は把握しております(中略)円滑なお取り扱いに向けて日本郵便さまと日々調整を進めております。

また、SD の役割・責任を明確化し、適所適材の配置を行うことで、適正な労働時間の管理、より働きやすい労働環境の構築、働きがいの向上に取り組んでおりますが、社員に関するご質問については、従来から回答を差し控えさせていただいております」


無謀なコスト削減によって生まれた現場の疲弊&退職ラッシュという負のスパイラル。混乱はまだまだ収まりそうもない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班