1. (1)ストーカーとは

    ストーカーには「つきまといをする人」という意味があります。日本においては、以前は警察による対処が難しい事案でしたが、平成12年に桶川ストーカー殺人事件がきっかけとなり「ストーカー規制法」が成立しました。その後、罰則の強化や非親告罪化などを盛り込んだ改正法が平成29年に施行されています。

    ストーカーは、従来は単に有名人などを追っかける行為を指していましたが、私人が対象のストーカー行為が一般的になり、多くの事件が発生したことから法律で規制することになりました。ストーカーの語源のように特定の人を追っかけることだけでなく、待ち伏せや見張りをする、監視をしていると相手に伝える行為も含まれます。また、無言電話やSNS上でのつきまといなど実際に会わないでする行為も規制対象となっています。

    改正前の法律では親告罪でしたが、改正により非親告罪となり被害者が訴えなくても警察が事件を捜査し、検察が控訴提起できるようになりました。
    ただ、ストーカー行為に当たるとされた場合でも、突然逮捕されることはほとんどありません。通常はその前に警察から警告を受けて、それにも従わないときに逮捕されます。

  2. (2)ストーカー行為は集団でも罰せられるか

    ストーカーは単独での事案が多くみられますが、集団がひとりに対してする嫌がらせ行為では、どのようなときにストーカー行為として扱われるのでしょうか。
    たとえば、特定の相手に対して、複数人が共謀の上、自宅や職場などそれぞれ担当する場所を分けて見張りをする行為や「いつも見ている」などとSNSを通じて告げる行為も同法の規制対象となり、逮捕される可能性があります。

    また、特定の相手を中傷する内容をメールやSNS上で書くことも対象になりますので、加害者同士がお互いに面識がない場合でも同様に罰せられる可能性があります。
    ただし、これらの行為は繰り返して行われてはじめてストーカー行為として判断されるため、一度では対象となりません。

  3. (3)ストーカー行為で逮捕されたら

    逮捕され、起訴された場合、有罪が決定すれば前科が付き、同法では懲役刑が規定されているため刑務所での懲役を科せられる可能性があります。初犯である、あるいは犯罪の内容が軽度とみなされれば執行猶予や刑期が最大になることはほとんどありません。
    しかし、ストーカー行為によって被害者がうつ病などの精神病を患ったケースなどにおいては、さらに傷害罪が適用されるという可能性が考えられ、ストーカー行為の他に暴行罪や傷害罪などが加わると、刑罰が重くなる可能性は高まります。
    刑法では併合罪加重といって、2つ以上の罪を犯したときはその中でもっとも重い法定刑の1.5倍の量刑が科されるので、ストーカー規制法自体の刑期は短くても、その他にも罪が適用された場合は、より重い量刑が言い渡される可能性があるのです。

    ストーカー規制法はストーカー行為について規制していますが、それだけではなく行為の態様によってはその他刑法などの法律に触れることも注意しなければなりません。