今大会は今までにない最悪の環境からスタートしました。
現地クロアチアで待っていた洗礼はまさかのロストバケッジ。
ユニフォームもボールもシューズもない。
生活グッツもない。
空港のロストバケッジセンターに行くと試合道具が入ったバックは世界中のどこにあるかすら分からないという。
旅行者でも混乱する状況の中、私には人生をかけた試合が待っているのに・・・
全てがない状況だったが、たった一つあったのはこの日のために準備してきた強い心だった。
準備をしてきた時こそアクシデントに合ったショックは大きいのかもしれない。
何故今なのだ。
何故私なんだ。
何故預けてしまったのだ。
マイナスの何故を考える。
中途半端な準備だと諦めがつくだろう。
この状況で勝てるはずがない。
負けた理由が確定していく。
今までの私ならここで負けていただろう。
ただ私には何を成し遂げにここにいるかという使命感がある。
それを成し遂げるには現状を受け入れる強さが必要だった。
決断すればマイナスの何故は考える必要はない。
何が試合に必要なのかを確認し潰していく。
ショッピングセンターにいきシューズ、ウェア、生活グッツを購入していく。
プラスの何を考え実行していく。
自分でコントロールできる事はやりつくす。
練習では現地の方のボールを借りて練習したが、やはり慣れ親しんだボールとは違和感がありタイミングが合わない。
現地で新しいボールを購入し更に練習し調整をする。
通常なら試合前は軽い調整で終わるが納得行くまで
初戦を控えた夜、吉報が入る。
バックが見つかりもう間もなくホテルに届くという。
他のボールで調整は終えたものやはり自分のボールで闘うのがベストだろう。
再度自ボールで調整にいく。
準備してきただけにこんな事で負けたくない。
通常であれば試合本番前、これから始まる長い闘いに備え心を整え、技術を入念に確認し、体を休めるべきだっただろう。
でも私には今を闘うだけで精一杯だった。
こうしてスポールブール世界選手権は開幕した。
この時の私は更なる試練が待っているかを知る余地もなくただ純粋に前回大会から今までの二年間努力した成果を世界の猛者達と本気でぶつかれる事にワクワクしていた。
このときまでは・・・
中編に続く


