震災から学べない日本 | 世の中まとめて好奇心

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 本を読む気力が少し…

 

ここにきて,ようやく本を開く気分になってきた。

本棚の整理をしていたら,下の写真のような小冊子が出てきた。

これは東日本大震災のあと,東京で行われた板倉先生の講演会の記録の一部である。

「震災を日本の変革の転換点に」とあるのだが,さて,あの震災以来,日本は変革したのだろうか。そんな気持ちで読み始めたのだが。



残念ながら,ここに述べられていることは,そのまま今の状況にもあてはまっている。

 

 

 日本の地震学者たち

 

 たとえば,当時の地震学者たちのこと。

 

今回は東北沖に地震があったけど,地震学者は東海地震や南海地震の話ばかりしていたでしょ。学者たちはそちらで地震が起きるということばかり研究してたんです。これは素人からみても,とんちんかんな話になったなあと思うんです。「東北沖で貞観時代の869年に大津波があった」という情報が伝わって,十分に吟味されていればなあと思いますね。(本書12ぺ)

 

実は,東日本大震災が起きる前から,貞観地震のことも調べられていたらしい。陸地のずいぶん奥まで津波が来たらしとか,あれから1000年以上たっているから,注意した方がいいとか…。

でも,地震学者の主流派たちは,研究するとお金になる「南海トラフ地震」の地震予知にこだわった。こだわってもいいけど,それのみに…というのが研究者らしくない。

 

今回の能登半島地震でも,その状況は変わらなかったようだ。

今回の地震を報じる新聞を読んでいると,阪神淡路大震災をもたらしたものが活断層による直下型地震であり,その直下型地震が被害を大きくすることは分かっていた。

この阪神淡路を機会に,日本全国の活断層の再調査・再評価も行われて,能登半島沖にも危険な活断層があることもわかっていた。

それなのに,能登沖の活断層が起こす地震の規模は,こんなに大きくなるとはおもっていなかった。なぜ,そんなことが言えたのか。

 

「地震による被害(予想)を見直そうと思っているときに起きてしまった」と言っている学者もいるが,それにしても…である。

 

 

 平松教授の話

 

3年ほど前から,奥能登珠洲市を中心として起きていた,地下の流体によると思われる群発地震について,何度か学者の話を聞いたことがある。

金沢大学の平松良浩教授(今回の地震の報道でも,よく目にする学者さんだ)は,次のように述べていた(2022年7月26日の講演)。

 

「輪島沖セグメント」が300年前に動いたとすると,この断層が動く可能性は小さい。

一番怪しいのは「珠洲沖セグメント」。東側で起きている地震はこの断層の延長部に来ているかも知れない。流体が,地下の断層面を通じて浅いところにどんどん上がってきて,このセグメントの深いところに入っていくと,この断層を動かすことがあるかもしれない。

活断層の長さは地震の大きさと関連しており,長ければ長いほど大きな地震

なる。20 ㎞ぐらいの長さでM7ぐらいの地震になる。ただこれが単独で動いても人が亡くなるような大きな津波は起こらないと思う。

しかし将来,大きな地震が絶対起こるとも起こらないとも断定できない。わたしの立場としては「起こるかもしれないと思って注意しましょう」という注意喚起することにある。この辺りは海沿いに住んでいる方が多いので,激しい揺れを感じたら「もしかしたら津波が来るかもしれない」と思って行動するのが1 番だ。テレビやラジオなどの情報を待っていたら,避難が間に合わない可能性がある。(「珠洲市付近の地震活動について」『耕す会報告集』より)

※「セグメント」というのは,活断層を構成する部分の名前のこと

 



このとき,わたしは,次のような質問をした(上記の活断層の話も,わたしの質問を受けた後で話されたことだ)。

能登半島のでき方に関する質問だ。

 

質問:

能登半島の海岸線と活断層のラインが重なって見えるし,内浦の地下にはカルデラ構造があるというが,それらが能登半島の陸地を作っていると考えていいのか。

 

これに対して平松教授は,

 

能登半島の場合は,北東-南西方向の活断層が主要な働きをしていて,この断層は必ず南東方向が隆起する。外浦の方に断崖絶壁が多いのはこの活断層が作ったからだ。それが過去100 万年とかのスケールで何度も活動し,外浦の陸地を隆起させている。内浦の方にも活断層があり同様に隆起させているが,外浦の方の活動度が高いので全体的に北側が高くて南側が低いというすこし傾いた地形になっている。その大本は,日本海が開いた時にできた断層構造である。

 

と教えてくださった。

 

今の能登半島の形は,まさに逆断層型の活断層が作ってきたものであり,それは,今後も起きるであろうことは確実だったのだ。あとは,「いつ起きるか」ということでしかない。

わたしも,まさか,外浦で4mもの隆起が起きるとは想像できなかったが,能登半島の外浦が断崖になっていることを考えると,地学的な時間軸では「ふつう」のことなのだろう。

問題は,それが起きるまえに,起きたときにどうすればいいのか…ということだろう。

 

平松教授がいうように,大きな地震がいつ起きるとも起きないとも言えないのだから,自分で判断して行動できるようにしなければならない。

今回は「放送を待たずして高台に逃げるように…」ということを守ったおかげで助かった人がたくさんいた。

 

平松教授は「20 ㎞ぐらいの長さでM7ぐらいの地震になる。ただこれが単独で動いても人が亡くなるような大きな津波は起こらないと思う。」と言っているが,さらに「しかし将来,大きな地震が絶対起こるとも起こらないとも断定できない」とも言っている。

今回は,いくつかのセグメントが連続してズレたと言われている。一説には150㎞もの断層が動いたらしい。これでは,M7ではすまないだろう。実際、今回の能登半島地震はM7.6もあった。

 

以上,残念ながら「(東日本大)震災を日本の変革の転換点に」とはならなかったという話。

 

今日は触れなかったが,原子力発電所問題も同様だった。

この10年の間に,いつの間にか原発推進が当たり前となってしまった日本。

しかし,今回の地震で「原発事故の際に避難など全くできないこと」が判明した。これで,また少しは原発推進熱も冷めるだろうが,またぞろ,いつかは復活するに違いない。

 

甚大な被害をもたらした大災害からでさえ何も学ぶことができない日本(政府・経済界などの優等生たちは)は,未だにエコノミック・アニマルの塊なのだろうか。

ああ無情!