高岡市美術館で開催されている「バンクシーって誰?展」に行ってきました。TVのCMで放映されていたのを見た神さんが「見てみたい」と言ったからです。もちろん,わたしも見てみたい。
奥能登から高岡までは,能登から金沢くらいの距離です。がしかし,今回,能越道が工事中であり,下道を通ったので,ちょっと予定より時間がかかりました。
この美術展が素敵なのは,まず,撮影自由だということです。これは珍しい。唯一,CDなどのジャケットに使われている図画などだけはNGという親切さ。この展覧会は,街の中に入ったようなセットがあるというのが売りなのですから「人を入れて写真を撮ることができる」というのは,とても大切な設定だと思います。
館内に入ると,街の様子を再現したセットがいくつもありました。バンクシーが,どんな場所に、どんな目的でその絵を描いたのか。ストリートアートにとっては,それはとても大切な要素ですからね。
上の作品は「Les Mise'rable」と名付けられたもの。「レ・ミゼラブル」ですね。催涙ガスに包まれて主人公のコゼットが泣いています。後ろにはフランス国旗が。この作品は,ロンドンのフランス大使館前に描かれました。左下にあるQRコードを読みとると本物の映像が流れます。そこには,催涙ガスを使って難民キャンプを襲った警察の姿が出てきます。警察は「催涙ガスを使っていない」と言っていたそうですが,その証拠映像も一緒に描いたというわけです。バンクシーは,このようにSNSなども大いに活用して,自分の作品と主張をアピールしています。
これは,なんのパロディーかわかりますか? そう,フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」です。ここでは,もともと壁についていた黄色の警報器を耳飾りにしています。2014年の作品ですが,2020年の4月,だれかが大きな医療用マスクをこの絵に着けました。もしかしたらバンクシー本人かもしれません。
このように,バンクシーの絵には,さらに上から何かを描き加えたり,書き加えられたりすることもよくあるようです。
「The Walled Off Hotel」。2017年,バンクシーがパレスチナ自治区のベツレヘム市内にオープンしたホテルです。このホテルはイスラエル政府が築いた高さ8m,全長700キロメートルの分離壁のすぐ傍にあります。
バンクシーは,その分離壁にもいくつもの絵を描いているようです。この展示作品は,その壁の絵がホテルの窓から見える様子を表しています。絵は,プロジェクターで切り変わります。
わたしが結構気に入った作品。爆撃の後のガザ地区北部のベイトハヌーンにバンクシーが書いたのは,可愛い仔猫の絵です。毛糸の玉のようにあるのは,鉄くずのボール。バンクシーは「SNSではガザの悲惨な現実より,もっぱら子猫の写真ばかりが見られている」と言っているそうです。
最後は,神さんとバンクシーのツーショット。バンクシーは,ネズミやサルをよく描いています(このブログでは紹介しませんでしたが)。で,顔を映さないでサルのお面をかぶって撮ったポートレートも存在しています。この作品は,彼がステンシルを使って作品を作っているときの立体復元作品です。
神さんが気に入ったのは,おそらく次の作品。「Girl With Balloon」(風船を持った少女)。例のシュレッダー事件の元になったのはこの作品でしたね。
久しぶりに,音声による解説用の機器を耳に当てながらの鑑賞でした。図録も,たったの1650円。安い~。
バンクシーがますます好きになりました。